Part 2の続きになります。Part 1ではライブまでの話、Part 2ではライブの前半の模様を書きました。
Part 1はこちらで読めます↓
Anathema ライブレポ 2018.08.18 (Part 1)
Part 2はこちらで読めます↓
Anathema ライブレポ 2018.08.18 (Part 2)
目次
セットリスト
整理用にもう一度セットリストを書いておきます。
本編
1. Deep (キー-1)
2. Lost Control (キー-1)
3. Can’t Let Go
4. Engless Ways (キー-1)
5. The Optimist
6. The Lost Song Pt. 3
7. Breaking Down the Barriers (キー-1)
8. Thin Air
9. Springfield
10. The Beginning and the End (キー-1)
11. Universal (キー-1)
12. Closer (キー-1)
13. A Natural Disaster (キー-1)
14. Distant Satellites (キー-1)
15. Untouchable Pt. 1 (キー-2)
16. Untouchable Pt. 2 (キー-2)
アンコール
おまけ. MCに合わせてPink Floydの”Shine On You Crazy Diamond”のイントロをDaniel Cavanaghが弾く
17. Fragile Dreams (キー-1)
この記事は11曲目の”Universal”から始まります。
Universal
“The Beginning and the End”が終わると最後の音が消えないうちに”Universal”のあの心臓の鼓動のような音が聞こえてきました。
彼女(Part 1で説明しましたがAnathemaを教えてくれたポーランド人です)はもうこの時点で私を叩きながら「ねえ、Universalだよ!!!聞こえる!??」と叫んでいました。
もちろん聞こえていたのですが反応すらできず。私は最初信じられず呆然とステージを見つめていましたが、そのまま静かに聞き入りました。
ボーカルのVincent Cavanaghは床に膝をつきながら祈るように歌い始め、前半の歌パートをあの映像化されたブルガリアでのライブ(“Universal”というタイトルで発売されたもの)と同じくらい熱く歌い上げました。
ボーカルパートの一部ではギター・コーラスのDaniel Cavanaghに元々のメロディを任せてVincentが高音で歌っており、迫力がより増していました。
また私はYouTubeで”Universal”の世界各地での客録映像をよく見ていたのですが、こういう演出を見たことがなかったのでそれも嬉しかったです。
正直に言えば、キーが半音下げられていたことで戸惑う場面もありました。いつも聴いている曲なのに次にどの高さの音がくるのかわからず、少し気持ち悪かったのです。
絶対音感がある人の中には絶対音感に頼りすぎて相対音感が発達せず、カラオケでキーを変えて歌えなくなるなどの障害が発生したり、キーが変えられた曲を聴く時に強い違和感を覚えたりする人がおり、私はそのパターンです。
それでも、個人的にこの曲の本番だと思っている後半のインストパートに到達する前に感無量になってしまいました。
Vincentのボーカルが終わるとDanielのギターソロが入り、曲が一旦止まって後半へ。
後半のインストゥルメンタル部分が私のAnathemaへの愛の象徴であり、まるで小説のストーリーのような、絶望的でありながらも奇跡のように美しい物語の中を共に歩んできた彼女との思い出の結晶でもあります(大袈裟だな!と言われそうですが案外言い過ぎではないんです)。
ピアノのみの演奏から始まってゆっくりと色々な音が増えていくこのパートですが、例のストリングスによるメロディが始まるあたりで急に泣き出してしまいました。
この曲に対する思い入れがあまりに強く、楽曲に今まで詰めてきた記憶が一気に溢れてきて耐えられなくなったのだと思います。それからUniversalが終わるまで彼女の腕の中で号泣し続けました。
今までの音楽人生であれほど強い感情の波に襲われたことはありません。同じ年の4月に見たポーランドのバンドClosterkellerのライブで”Strefa Ciszy”という凄すぎる楽曲を生で聴いた時もここまではいきませんでした。
前から好きだったAistė Smilgevičiūtė ir Skylėというリトアニアのバンドのコンサートに初めて行った時も感動しましたが、やはりそれとも比べ物にならないほどです。
“Universal”の最後に合わせてVincentが自分の水が入ったペットボトルを2本客席に投げてくれたのですが、それが隣で見ていたカップルのところに着地しました。
みんなで飲み回そうという意図で私に渡してくれたのですが、私はあまりにも強い感動の後で何が起こったのかわからず、ペットボトルを手に持ったまま呆然と立っていました。
いくらVincentの水とはいえ知らない人同士で飲み回しはちょっとね、と彼女が言うので、次の曲が終わるまでペットボトルを持ったままでいた後会場の隅にそっと置きに行きました。
“Universal”さえ聞ければセットリストの残りがそこまで好きでない曲だらけだとしても無条件で満足だと思ってライブに来たので、この時点でこのライブは一生思い出として残るだろうなと感じました。
ライブの後半
“Universal”に続いて演奏されたのは”A Natural Disaster”のインスト曲“Closer”。これはAnathemaが定番曲としていつも演奏しているらしいのですが、なんでこれが定番曲?という疑問がいつまで経っても消えません。
後半になるとだんだんと客が盛り上がってきて最後には跳んでいる人や踊っている人がかなりいたので、ライブで聴くとダンスミュージック的な効果が生まれて楽しいのかな?と思いましたが、「リズムが良い」という概念をあまり持っていない私にはやはりよくわかりませんでした。
「会場の電気を消すので携帯のライトで照らしてくださいね」というMCが入り、“A Natural Disaster”が演奏されました。ここまで女性ボーカルのLee Douglasの歌がまともに聴ける曲が”Endless Ways”しかなかったので、この曲を演奏してくれたおかげで存分に楽しむことができました。
続いては“Distant Satellites”。アルバムの”Distant Satellites”の中では前半のドラマティックな音楽性の方が好みなのでこの曲が収録されている後半は聴き込んでいなかったのですが、こういうエレクトロニカ的な曲も聴いていると心地良いなという印象を受けました。
ちなみに。このライブでは原曲でVincentが歌っている部分をLeeが歌っている、ということもありました。
このライブはフェスティバルの中の一部分なので、Anathemaは一時間半くらいしか演奏しないのではないかと思っていました。しかし、この時点で既に14曲が終わっていて演奏時間は一時間半を超えていました。
フェスティバルのタイムスケジュールが押していて夜遅かったのですが、帰りの時間はどうでもいいからできるだけ長くやってほしいという気持ちだったので、「「次が最後の曲です」と言わないでほしいとずっと思っていました。
結局最後の曲というMCがあったかどうかは覚えていませんが、ここで“Untouchable”をPart 1, Part 2続けて演奏。私はこの曲が大好きです。
個人的にポジティブな響きのある音楽があまり好きではないのですが、”Untouchable”からは明るさだけでなく深みを感じます。そのため、元気を出したいとき、明るい気持ちになりたいとき、活動的にしたい日の朝などにこの曲をよく聴きます。
私の音楽ライブラリには本当に暗い曲ばかり入っているので、その中で唯一爽やかともいえる”Untouchable”が重宝するのです。
“Untouchable Part 1”は前半を客に歌わせていました、しっかり歌っている人がかなり多くだいたい歌詞を完璧に覚えていたので、ポーランドのファンのAnathema愛を感じることができました。
前半のワクワク感も大好きですが、やはりこの上なくかっこいい後半部分での会場の盛り上がりは他にないほどでした。私の立ち位置から見える限りではかなりの割合が拳を挙げながら飛び跳ねており、私の彼女も同じように飛び跳ねていました。
私は聴きながら「かっこいいけどなんとなくテンポが遅い気がする」と思っていたのですが、後から客録の動画をYouTubeで観てみるといつも通りのテンポだったので、恐らく心拍数がかなり上がっていたのだと思います。それほどの興奮でした。
続く“Untouchable Part 2”はしっとり聞かせる曲ですが、こちらでは音楽の美しさが際立っていて、ボーカルのハーモニーもギターのDaniel Cavanaghによる最後のトレモロソロもいつも通り一級品でした。
ここで本編が終わりメンバーが一旦裏に退いていったのですが、まだアンコールがあるとわかっていながらも頼むからまだ続けてくれという気持ちでいっぱいでした。
アンコール
メンバーが再び登場するとVincentによるポーランドの話題が始まりました。色々な思い出話やおふざけが聞けたり、その背景音楽としてDanielがPink Floydの“Shine On You Crazy Diamond”のフレーズを弾いたりと楽しい時間になりました。Vincentがグロウルでポーランド語のキャベツを表す単語(kapusta)を披露していたのも面白かったです。
アンコールで演奏された曲は“Fragile Dreams”。これがアンコールの1曲目で演奏されることは最初からわかっていましたが…。皆この曲が大好きなようで”Untouchable Part 1″と同じくらい盛り上がっていて、彼女もまた拳を挙げながら飛び跳ねていました。
アンコールが1曲しかなかったのは予想外でしたが、ここまでたっぷり17曲聴くことができて、フェスティバルの一部なのに普通のライブと同じかそれより多いくらいの曲数を用意してくれたことが嬉しかったです。
ライブが終わるともう深夜0時を過ぎていました。前日イギリスでフェスティバルに出演したばかりだったみたいなので(Leprousも)、よくやってくれたなと思います。
メンバーについて
メンバー全員生で見るのは初めてだったので、受けた印象を書いておきます。
Vincent Cavanagh – ボーカル・ギター・キーボード・パーカッション
予想していた通り熱のこもったパフォーマンスを見せてくれる姿は最高にかっこよかったです。”Distant Satellites”や”The Optimist”といった新しいアルバムに収録されているエレクトロニカ的な楽曲群ではギターがDaniel一人になるので、Vincentはステージの後ろでボーカル・キーボードを務めてました。”Distant Satellites”では打楽器の補助もしていて、フル回転の活躍でした。
またアーティストとして繊細な感性を持っている反面振る舞いは自信に満ち溢れていて、ギャップに驚かされました。
Daniel Cavanagh – ギター・コーラス・キーボード
他のメンバーが定位置で演奏している中、Danielは客に気を配って常に動き回ってくれていていました。Danielの定位置前にあたる客席から見て左側にいた人も、その逆である右側にいた人も彼が演奏する姿をよく見られたと思います。
Anathemaのメンバーの中で曲間に一番しゃべるのもファンとの対話を一番大事にするのも、そして一番明るく爽やかなのもDanielで、好感度が一気に上がりました。
Lee Douglas – ボーカル
この人が活躍する曲はあまり多く演奏されませんでしたが、ライブでも歌声の美しさはCDそのままでコーラスも安定していました。ライブの序盤で曲間に男性客が”Leeeeee, I love you!!!!”と叫ぶということがあったのですが、手を挙げて反応しながらも苦笑いしていました。
John Douglas – ドラム・キーボード・パーカッション
後に紹介するDaniel CardosoがAnathemaに加入するまでは彼が唯一のドラマーでしたが、このライブではほとんどの曲をDaniel Cardosoが叩いていてJohnはほとんどの曲でパーカッションを担当していました。
最近は彼がメインでドラムを叩くことがかなり減っているようです。サイン会で近くから見ましたが普通のおじさんのような雰囲気でした。
Daniel Cardoso – ドラム
ポルトガル人で、元々キーボードも担当していましたが今回のライブではほとんどの曲でドラムを演奏していました。
ドラムに関しては未経験なので何もわかりませんが、安定していると思います。彼はAnathemaの中で一人だけスペイン・ポルトガルあたりに多い男前の濃い顔をしていて、メンバーの中ではかなり目立っている気がしました。
なお、ベースのJamie Cavanaghはこのフェスティバルの前にAnathemaでの活動を中断しているので見ることができませんでした。
最後に
この記事を書き始めたときはあとがきも書く予定でしたが、書くべきことは本編で書きつくしたと思うのでこれで終わります。三部にわたるライブレポでしたが全て読んでくださった方、ありがとうございます。