[ポーランド留学]ポーランドの大学の授業内容・1学期目

今回はポーランドの大学の授業内容について書きます。ここでは一年間の留学のうち1学期目の授業について書きます。

ポーランド留学についての記事では、ポーランド留学に興味のある方の役に立てば良いなと思っているのでありのままを綴っています。

所属について

私が1学期に通っていた課程は純粋なポーランド学科とは少し違います。無理矢理日本語に訳すなら「国際ポーランド学」ポーランドの言語や歴史・文化を専攻するのですが、「国際」というだけありこの学科はポーランド人学生と外国人学生のミックスです。

私が混ざったのは1年生のグループですが、参考までに内訳を紹介しましょう。最初はポーランド人が6人、ウクライナ人が約10人、中国人が1人という構成でした。ポーランド人も在籍する学科なので、もちろんここにいる外国人はほぼ全員ポーランド語を問題なく使えます。使えない人は中退します。

1年が経って残ったのは、つまり2年次に進んだのはポーランド人2人、ウクライナ人7人です。一般的にポーランドの大学では多くの学生が一年次で脱落します。

私はこの学科に学生として在籍していたわけではありませんが、学校の許可のもと自主的に一部の授業に通っていました。

週3(火・水・木曜)でこの学科の授業がある中、私は火・水に出席していました。上の学年の授業もとっていいよと言われたのですが、そちらで興味のある授業の時間割が全て1年次の授業と被っていたので2, 3教科諦めなければなりませんでした。

なお2学期はこの学科に加えてポーランド語学科の授業に通ったので次の記事ではポーランド語学科についても書きます。

授業の種類

Historia, struktura i zróżnicowanie języka polskiego

日本語にすると「ポーランド語の歴史・構造・差異化」でしょうか。
火曜日と水曜日に1コマずつあり、この2つは演習形式と講義形式に分かれていて教員も違います。

これはポーランド語を勉強する授業ではもちろんなく、ポーランド語を学問的に分析する授業です。1年次の授業ではありますがすでに言語学的なアプローチが基本となっており日本の大学とはかなり違うなと思いました。

ちなみに、私は日本の大学でも言語を学んできましたが、今まで音声学しか教えられていませんしその授業は必修ですらありませんでした。仲良くさせていただいている他学部の先生にそのことをお話したら大学教育としてありえないとおっしゃっていました。

ポーランド語に限らず、言語には教科書を見る限り不可解と思われる現象(先生に例外なので丸暗記してね、と言われる諸事項のことです)が存在します。それらは、言語の歴史を研究することでそれを論理的に説明することが可能になります。

この授業では言語学の分野のうち音声学・語形成論・形態論などを学びながらその知識を使ってそういった現象を説明していきます。

授業を聞いているとポーランド語の昔の姿や他のスラヴ諸語、さらにはスラヴ祖語に関する言及もあり、演習の方では古いポーランド語のテキストを大量に読むことができます。初めてポーランド語の単語が現れた文献、初めて全体がポーランド語で書かれた文献、今とは違う古い正書法による文献などです。

Języki w świecie

「世界の言語」という授業で、内容は名前の通りです。こちらも演習形式と講義形式に分かれています。なんと演習形式の授業の先生は東京外大に数年間在籍されていた先生でした。

まずはポーランド語が世界の言語のうちどこに位置するのかを確認。ポーランド語はインド=ヨーロッパ語族のスラヴ語派のうち西スラヴ語群に属します。

そしてまずはヨーロッパに存在する数十の主な言語の歴史的分類を学び、それから言語の構造に基づく様々な分類(屈折語・膠着語・孤立語や音声的に豊富な言語・そうでない言語など)を勉強します。つまり、通時言語学的アプローチも共時言語学的アプローチもあります。

もちろんヨーロッパの言語だけを扱うわけではなく、世界中に存在する興味深い事例を頻繁に取り上げてくれます。時々日本語母語話者として、日本語にあってインド=ヨーロッパ諸語にない現象の説明を求められることもあります。

その他にも「言語」とは何か、言語学にはどういった見方が存在するかなど、言語学の基礎にも触れることができます。

普段何気なく使っている用語に具体的な認識を与えたり、何が言語に意味を与えているのかを生徒にじっくり考えさせたりする時間もあり、ただ教えられるだけではなく時に自力で仮説を立てることを求められるので刺激にもなります。

Historia i kultura regionów

「諸地域の歴史と文化」とでも訳しましょうか。私は講義形式の方しか受講していませんが、ポーランド語の色々な方言に触れることができる貴重な授業です。

方言学の入門的な内容も扱いますが傾向としては実践的な授業で、ポーランドの各方言やそれらをめぐる政治的・文化的・歴史的な事情を説明してくれるので、この授業を聞いていれば外国人でも平均的なポーランド人より詳しくなってしまいそうです。

大学のあるシレジア地方で話される話者数の多いシレジア語をはじめ、グダンスクなどのあるポモジェ地方に住むカシュブ民族の言語であり数年前に正式に方言ではなく一つの言語として認められたカシュブ語、他にポーランドに存在するマゾフシェ方言マウォポルスカ方言ヴィェルコポルスカ方言などについて、実際にテキストや音声に触れながら学んでいきます。

授業中に言語学的に方言を分析することで各方言の特徴と標準ポーランド語との対応関係を示してくれ、それを覚えた上でもう一度テキストに触れると自力で解読できる、という楽しい体験ができます。

グダンスク大学のカシュブ語学科(最近開講した課程です)で教えていらっしゃるカシュブ出身の先生が出張で授業をしに来てくださったこともあり、毎回新鮮な感動でいっぱいです。

最後に

自分の興味と受講に伴う負担を考慮した結果通っていない授業もたくさんあるのですが、直接言語に関わる授業だけではもちろんなく、実際にこの学科に在籍すると宗教・哲学・芸術などについても学ぶことができます。

少なくとも私は授業内容にこの上なく満足でした。実は他のクラスメイトに比べてポーランド語自体が苦手だったので常に人一倍集中しなければならず、体力も要りますし毎回試練でいっぱいでしたが、語学留学の域を超えてより意味のある勉強をできたことがとても嬉しいです。

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