Aistė Smilgevičiūtė ir Skylė ライブレポート 2017.09.23

リトアニアのフォークロックバンドAistė Smilgevičiūtė ir Skylėのライブに初めて行った時のレポートです。

※このライブレポはライブの2日後に投稿した記事をこのブログに持ってきたものです。文章の書き換えは最小限にとどめています。

こんにちは!ついに夢が叶いました!私が激応援しているリトアニアのアーティストAistė Smilgevičiūtė ir Skylėのライブに参加してきました。

ライブについて、そして開演まで

ライブのタイトルは”Rudens lygiadienio koncertas”。秋分を祝うコンサートです。
会場はリトアニアの首都ヴィリニュスのヴィリニュス大学構内にある聖ヨハネ教会です。

開演は19時でした。ヴィリニュスに来る数日前に出ていた天気予報では最悪の天気の予定でしたが、実際は雲一つない晴天の日になりました。昼間は観光したりトラディショナルなグッズや音楽を揃えたお店Ragainėで買い物したりして過ごしました。

18時には大学構内に入り、開場が18時と書かれていたにも関わらず入れたのは18時半過ぎ。
教会の中にステージがあるのは新鮮な光景ですが、本当に美しいロケーションです。

席は教会の椅子で、収容人数は恐らく400人くらいだったと思います。私はチケットを素早く買ったので最前列の端から3番目でしたが、教会ということで席が横に広いわけではないのでちょうどキーボードのメンバーの正面くらい。

ステージまでは約3メートルでした。近い…!しかも30分前でも入場はかなり早めで、入ったときは数人しか座っていませんでした。

ライブレポ本編

19時を10分以上過ぎて、4人組のストリングス隊の演奏から1曲目のŠventaragisへ。ヴィリニュス遷都にまつわる伝説をモチーフにした民族音楽調のロックで、彼らの楽曲の中でも完成度はかなり高いです。

Aistė Smilgevičiūtė(ボーカル)は歌の直前で登場です。アレンジされていて最初は何の曲かわかりませんでしたが、Šventaragisだとわかった瞬間に涙が溢れ出そうになったので必死でせき止めながら聴いていました。Kęstutis Drazdauzkasのフルートも完璧。それと、生で見るとイメージよりかっこよかったです。

Aistėは赤い衣装で登場。秋をイメージしているのでしょうか。今回はコーラスの女性が一人ついていました。

Aistėの歌は音響や調子によって、バンドの演奏も音響やサポート編成・アレンジによって波があるので、正直音に関して不安を抱きながらコンサートを迎えましたが、 教会という条件に関わらずAistėの歌もバンドの音も申し分なく安心して音楽を楽しめました。しかも最前列ということで、近いだけでなく視界が完全なので細部まで見ることができました。

Aistėは例外として、バンドの他メンバーを生で見たのは初めてです。特に今回はギター・ボーカルのRokas Radzevičiusの身長を体感してこようと張り切って来たのですがやっぱり高い!記事の後半に彼が何センチあるのか書くので楽しみにしていてください。

次は私が初めて聴いたSkylėの曲であるAš gaudau svajas。もうこの2曲だけで胸がいっぱいです。ロック色を取り入れながらも上品かつ端正で、Aistėの声が活きる曲です。

コーラスの女性が上手でAistėとも声の相性が良く、ギターソロの部分などは綺麗にハモっていました。また、ギターのEnrikas Slavinskisは新しいメンバーですが、この人は見た目もスタイルもメタル系で、Skylėの音楽に調和するようにメタル度を抑えて演奏しているそうです。

この人がいるときの作品のギターがかっこいい理由がわかりました。フォークロックのバンドにこんなメンバーがいるのは面白いです。

次はUpelė。これはかなり民謡的でしかも方言で歌われておりもはやロックとはいえませんが、Skylėの魅力が詰まった曲。これはAistėでないと歌えません。

コーラスのサポートメンバーとのハーモニーがとても綺麗でした。この人がコーラスを入れると元のCDのようにきれいな音が出るので不思議です。

アルバムVilko vartaiからの曲が続き、4曲目はDevynios baltos upės。これもとても気に入っている曲で、RokasとAistėの声のハーモニーが堪能できました。本当に美しい曲で、教会でこれを聴けるのは至上の贅沢だと思いました。

続いて2000年のアルバムBabilonasから唯一Androginasが演奏されました。キーは-2で、これも美しい系の楽曲です。教会というロケーションのために選曲にこだわりや制約があるそうで、そう考えるとこういう曲を中心に演奏するのもうなずけました。

そしていよいよ最新アルバムDūšelėsからの曲、Man toli iki tavęsが聴けました。この曲はDūšelėsの中で唯一コーラス隊のいらない曲なのでこれが演奏されるのはある程度予想していましたが、同じようにライブ録音であるDūšelėsのCD音源よりも良い演奏でした。

シンプルながらも穏やかで控えめな美しさを持つこの曲はDūšelėsの中では特徴がないかなと思っていましたが、やはり生で聴くと心にくるものがありました。

次は知らない曲でした。後でわかったのですが、これはOugas auksoという古いリトアニア語で歌われている曲です。何に収録されているのかはわかりませんが、個人的にこの曲が今回のコンサートのAistėの歌のハイライトであると思っています。

音楽的にとても美しく、決して易しくない曲ですが、これを歌いこなしているときのAistėは一段と輝いていました。

次はNeda Malūnavičiūtėという女性フルート奏者が登場して3曲。

Povandeninės kronikosからLaikas。この曲は少し威厳がありこれを演奏するのも意外でした。なお、Nedaはフルートで登場しましたがリトアニアでは歌手として少し有名な人なんだそうです。フルート演奏のスタイルはユニークでした。

今まで聴いたことのなかったŠventas rytasという曲が続きました。だいたい2曲ごとに入るMCがこの曲にもあったので聞いていましたが、この曲はAistėとNedaのデュエットで、初めて演奏する曲だ、と言っていたと思います。面白いのは5/4拍子を取り入れた曲であることです。

10曲目はアナウンスのあったRuduo。秋そのものをテーマにした曲で、この日にこれをやらないわけにはいきませんし毎年このコンサートでしか演奏しないそうです。

尺を延ばして後半はNedaのソロパートを見せ場にしていて、アグレッシブなほぼ即興の演奏はまるでRuduoではない曲を聴いているようでした。

次も知らない曲でした。Daulėliuという曲で、Rokasとコーラスの女性が怪しげなリフレインを歌う曲でした。照明も一曲通して暗く、Ruduoとは一転した雰囲気でした。この曲は何に収録されているのかわかりません。

今回はVilko vartaiからの選曲が多めで、Mėnesienaで4曲目。これも多少民謡的な雰囲気もある曲ですが、最後に見せる盛り上がりが見所です。この曲でもAistėとサポートのコーラスのハーモニーがきれいでした。コンサートを通してかなり良いコーラスだったので彼女の名前が聞き取れなかったのが残念です。

次はお待ちかねのDūšelėsからPilkapių sniegas。アルバムを代表する曲で、神秘的・呪術的な雰囲気とドラマ性が絶妙に組み合わさった名曲です。これは聴きたかったです。

本当は男4女4の編成のコーラス隊がいれば最高なのですが、今回は彼らがいませんでした。それでも十分迫力があり、客が手拍子などをして一緒に雰囲気を作り上げました。

このコンサートでは傑作アルバムBroliaiからの曲がほとんどなかったのですが、唯一演奏されたのがBroliai aitvarai。14曲目で、コンサート本編はこれで終わりでした。

私がBroliaiを初めて聴いたときに一番感動したのがこの曲で、暗闇を抜けて希望がやっと見えたというような雰囲気が大好きです。BroliaiのコンサートDVDを観たときは編成のせいかライブでは演奏が弱いなと感じたのですが、今回は申し分のない出来で大満足。この時のAistėは神々しくすら見えました。

コンサートが1時間半の予定であることは知っていたのですが、ここでメンバーが退くともう終わり!?と思わず驚いてしまいました。残るはアンコールのみ。何曲やってくれるのか、大好きなSeptynerius ilgus metusは演奏されるのか、ドキドキしながら手拍子をして待ちました。

1分ほどでメンバーが戻ってきて、次に演奏されたのはBaltas brolis。Skylėの楽曲の中で恐らく一番有名な曲です。私はこの曲に特別思い入れがあるわけではありませんが、これが演奏されるのは予想していました。元々楽曲のクオリティが高いので当然楽しめました。

続いては”Skylė”名義の時代、1996年の曲であるLukiškių pieva。これは嬉しかったです。Rokasがメインボーカルをとり、昔のような荒々しい歌を聴かせてくれるからです。

またこの曲はレコーディングに加入前のAistėが参加していたのでAistėもいつものように歌っていました。ただしメインはRokasなのであくまで脇役です。間奏ではメンバー紹介もありました。RokasはAistėをRadzevičienė姓、つまりRokasの妻としての姓で紹介していました。

これが17曲目、最後の曲で、Rokasによるロック・オペラJūratė ir KastytisからMeilės duetas。このデュエット曲をCDで歌っていたのはAistėとリトアニアの芸能スターMarijonas Mikutavičiusで、リトアニアではかなり有名な曲らしいです。

Jūratė役はもちろんAistėで、Marijonas(つまりKastytis)の代わりを務めたのはRokas。最後には二人が抱き合うなど心温まる展開でした。ドラムのSalvijus ŽeimysとベースのGediminas Žilys、キーボードのMantvydas KodisとフルートのKęstutis Drazdauskasも二人に続いてニヤニヤしながらそれぞれ抱き合うという悪ノリも。

これでコンサートは終了です。

セットリスト

セットリストは全17曲で、うち3曲の曲名がわからなかったので売り子をしていたRokasとAistėの息子に聞いてみるとRokasを呼んできてくれて、セットリストの紙をもらえました。

1. Šventaragis
2. Aš gaudau svajas
3. Upelė
4. Devynios baltos upės
5. Androginas
6. Man toli iki tavęs
7. Ougas aukso

~Neda登場~

8. Laikas
9. Šventas rytas
10. Ruduo

~Neda退場~

11. Daulėliu
12. Mėnesiena
13. Pilkapių sniegas
14. Broliai aitvarai

アンコール

15. Baltas brolis
16. Lukiškių pieva
17. Meilės duetas

こうなっています。これをもらったおかげで全ての曲のタイトルを書くことができました。

各メンバーの演奏へのコメント

Kęstutis Drazdauskas(フルート・コーラス)

彼の演奏上の立ち位置は不思議で色々なことをするのですが、かなりフルートが上手で佇まいも様になっていました。フルートはもちろんバンドの重要な要素ですが、他にも彼が色付けをしてくれるからこそSkylėの音楽が成り立つのだろうということが生で見てよくわかりました。

なお追加情報ですが彼はヴィリニュス大学の英語英文学科を卒業しており相当英語ができるそうです。

Rokas Radzevičius(アコースティックギター・ボーカル)

今回は髪を後ろで束ねての出演でしたが、彼は本当に背が高いです。ステージより少し下から間近で見ると巨人のようでした。演奏は常に安定していて、ギターを弾きながら歌っているときの揺れ方もすごく好きです。今回彼を生で見ることができて非常に嬉しかったです。

Enrikas Slavinskis(エレクトリックギター)

彼はインターネットでもよく見たことがなかったのですが、やはりメタラーの風格がありバンドの中では浮く見た目でした。長髪、がっしりした体形、あごひげなどどれをとってもメタルを感じます。

演奏はしっかり制御されていて、調和がとれていました。この人がどれだけ長い間Skylėに在籍することになるかはわかりませんが、Dūšelėsでのプレイなどもとても好きなので私はこのまま続けてほしいなと思っています。

Aistė Smilgevičiūtė(ボーカル)

彼女についてはもう言うことがありません。目の前で歌っているのを初めて見られただけで胸がいっぱいでした。やはり私の中では一番のボーカリストです。私のことも覚えていてくれました。

Salvijus Žeimys(ドラム)

彼はステージのかなり後ろに構えていて、演奏する姿を見ることができませんでした。しかし音だけから言わせていただくと安定感もありちょうどよい演奏でバンドを支えてくれていたのでよかったと思います。

Gediminas Žilys(ベース)

つい何週間か前にソロアルバム”Dievaitavimai”を出したマルチプレイヤーの彼ですが、バンドではベースを主に弾いています。

彼は後ろの方のドラムのSalvijusの隣でドラムの方を向いて演奏していたのでかなり主張が弱かったですが、見た目によらず一廉のプレイヤーでありうまく演奏に溶け込んでいました。つまりベースの務めをしっかり果たしていました。

彼は2010年のアルバムBroliaiのためにバンドにやってきてそれから今まで続けているプレイヤーですが、リトアニアの音楽やその歴史に造詣が深く生き字引のような存在だそうです。

ライブが終わって

ライブ後にはCDが売られているスペースで売り子をしていたAistėとRokasの息子やその友達と雑談していました。売られているものは全部持っていると言うと驚かれました。

ライブ中にわからなかった曲名わかる?と質問してみると「お父さんに聞いてくるわ」とRokasを連れてきて、ここでRokasと初対面となりました。まず握手をしましたが、向かい合うと大きさに圧倒されました。手もかなり大きいです。このあと質問してみたところ、身長は196センチだそうです。

自己紹介をしようと思っていましたがRokasは私が日本から来たこと、ポーランドに留学していることなど全て知っていました。私はリトアニア語が片言でコミュニケーションに問題が発生するため少し不安でいましたが、Rokasは英語が流暢なため安心して会話することができました。後から知りましたがロシア語も話せるそうです。

少しお話して、セットリストがわからなかったらこれ持っていきなよ、とメンバー用のセトリ用紙をプレゼントしてくれ、またCD売り場にいつの間にか登場していた(グッズの一つで、Skylėの楽曲の歌詞や歌パートの楽譜が掲載されています)を見つけた私が「あ、これは持ってないです!」と言うとRokasがすかさず無料でプレゼントしてくれました。とても嬉しいファンサービスです。

そのあとAistėのところに行くねと言われ、最後にSeptynerius ilgus metusの歌詞の日本語訳を見てくれたことを確認して少しだけその話をしたのですが、Rokasは急に一緒に行こうかと提案してくれ楽屋(教会の部屋ですが)まで入れてくれました。ここではコンサートの主催者さんとも会話をすることができました。

Aistėも片づけをしていて、私の姿を見るなり”Hello, again”(にこり)と言い、覚えてるよということをアピールしてくれました。今回はほぼRokasと話していてAistėとの会話はほとんどしませんでしたが、邪魔するのが一番嫌ですしこれだけでもとても嬉しかったです。

帰るころには恐らく22時近くなっており、開演前から空腹に苦しんでいたのでリトアニアの旧市街でリトアニア料理を食べて帰りました。頼んだのはカツレツで、”Jūratė”という名前がついていたのでもちろん即決でした。

まとめ

私はSkylėのファンの中ではかなり新規にあたりますが、それでもすでにこのグループがきっかけでたくさんの思い出ができました。Skylėに出会わなければおそらくリトアニアはポーランドの隣国でしかなかったでしょうし、そんなところに4回も行くなんてありえなかったはずです。

さらに自分が日本人であるというレアリティを生かして歌詞の翻訳など色々な方法で関わることができ、ついにはコンサートを観に行くという夢が叶ったことも未だに不思議です。

リトアニアという日本から遠い国にいてほとんど国内でしか演奏しないアーティストであるにも関わらず、知ってから2年足らずの速さでコンサートまで漕ぎつけたのは奇跡としか思えません。

※追記: さらに2018年7月にコンサートを2本観ました。

日本での知名度が0に限りなく近いのがとても残念ですが、私のブログを読んでくれている人が気になってくれたらなと願っていつも記事を書いています。コンサートもまた観に行きます。

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