L’escouade: “Confidences de Mouches” アルバムレビュー

スイスのプログレバンドGalaadのボーカルが主導するバンドL’escouadeのアルバム“Confidences de Mouches”(2010)を紹介します。

L’escouadeのアルバム”Confidences de Mouches”

L’escouadeはスイスのロックバンドです。

90年代に活動していたプログレッシブロックバンドGalaad(アーティスト紹介)のボーカルであるPierre-Yves Theurillatがリーダーを務めるのがL’escouadeで、いつ結成されたかはわかりませんが2010年に唯一のアルバム“Confidences de Mouche”を発表しています。

L’escouadeの音楽はGalaadよりも穏やかで、ほぼ別物といえます。アコースティックギターの音色が心地良く、聴いていると癒されます。PyT(Pierre-Yves Theurillatの別名で、ここからはこう書きます)の特徴的な声もL’escouadeの音楽性にマッチしていて、サウンドに渋さを加えています。

トラックリスト

  1. Le regard dans le carreau – 3:50
  2. C’est la nuit! – 4:52
  3. Écoute – 2:58
  4. Bibi – 6:35
  5. Un mois de mai – 3:58
  6. Chance – 5:29
  7. Tes confidences de mouches – 8:00
  8. Comme elle – 4:04
  9. Le cœur pur – 4:56
  10. Traverser les bois – 5:50
  11. Elle a – 4:31
  12. Dans la grande herbe du pré (Tempo) – 4:35
  13. Pars – 5:22

各曲レビュー

Le regard dans le carreau

最初から美しいアコースティックギターが聴けます。PyTは優しく歌っています。Galaadではシアトリカルな歌い方が印象的でしたが、この声質はアコースティックテイストの曲にも合うんですね。

メロディも美しく、最初から最後まで綺麗な曲です。

C’est la nuit!

ピアノを使ったおしゃれでポジティブな響きの楽曲。特にサビが気持ち良いです。

この曲を聴いていると嫌なことを忘れられます。私は気分が落ち込んでいるときに暗い曲を聴いた方が癒されるのですが、このC’est la nuit!はポジティブながらも控えめなのでそういう場面にも合います。

わかりやすい歌ものなのですが、やはりPyTの声があると何でも味わい深くなります。

Écoute

アコースティック色が強く、比較的短い曲です。

アコースティックギターの音色と低音で静かに歌うPyTの声がよく合っています。L’escouadeの他の曲と同じように、この曲にも特徴的なメロディがありそれがフックになっているので聴きやすいです。

Bibi

これは傑作です。

イントロから憂いに満ちた響きが止まらず、ボーカルも沈んだような表情を見せています。この曲もサウンドはアコースティックですが、それが音楽に品を与えています。

サビはシンプルながらも強い印象を残すようなメロディで、これが何回も繰り返されるので自然と覚えてしまいます。

6分半ほどある長い曲で、最後には盛り上がりも用意されています。エレキギターによるギターソロも聴くことができるので、他の収録曲に比べてダイナミックといえます。

Un mois de mai

ギターによる特徴的なリフで少し挑発的に始まります。アコースティックナンバーではなく、ロック的なかっこよさのある曲です。

キーボードの響きはGalaadやそれ以前のプログレッシブロックを思わせます。この楽曲ではこのキーボードが活躍しています。

Chance

4曲目のBibiに近い、静かで翳りのある曲調の曲です。

サビの後で生暖かい電子的な低音に乗せて歌われるダウナーなリフレインが特徴的です。

Galaadを聴いた人ならPyTのエキセントリックな歌唱に鳴れていると思いますが、しっとりと歌うとこんなにも素晴らしいのです。

後半ではシアトリカルな叫びにも似たセリフが聴けます。フランス語なのでアクが強いです。このアルバムの中でも特にダークな雰囲気のある曲です。

Tes confidences de mouches

このアルバムで最も長く8分ある曲です。

リフの不協和音のような不思議な響きが催眠的で、翳りも感じられます。音響的に特にこだわっているなという印象を受けました。

楽曲のどこを切り取ってもどこかすっと入ってこない不思議な曲で、理解するにも一筋縄ではいきません。しかし、この魔法のような響きにただ聴き入るだけでもこの上なく心地良いです。

Comme elle

ロックテイストの曲です。最初からエレキギターのコードストロークが鳴っています。

ヴァース部分は少し暗いような印象を与えますが、サビのコード進行には優しさが感じられます。リズムにはスピード感もあるので聴きやすいです。

Le cœur pur

素朴な美しさの中に翳りが感じられる曲です。

アコースティックギターだけでなくドラムやキーボード、エレキギターなどのロック的な音も目立っていて、彩りのあるサウンドになっています。特にサビはダイナミックです。

どこか憂いを感じさせるような美しいメロディも聴きどころです。

Traverser les bois

この曲にはMVがありますが、年齢制限があるのでPyTのYouTubeチャンネルのリンクのみ貼っておきます。

https://www.youtube.com/user/theutheu51/videos

アコースティックな音が使われているもののロックのような力強さがある曲です。ピアノの音も聴けます。

やはりメロディは良いです。そういえばGalaadの曲でも奇抜ではあるものの美しいメロディが際立っていました。

ドラマティックな響きがあり、ここまでの優しい曲があまり気に入らなかったとしても楽しめるのではないかなと思います。

Elle a

この曲にもピアノが使われていて、このピアノの演奏がモダンな雰囲気を作り出しています。それ以外はアコースティックギターがメインです。

不思議な明るさを持った響きが印象に残ると思います。特にサビでそれが顕著です。昼間に明るい空間でくつろいでいるような気持ちにさせてくれる曲です。

Dans la grande herbe du pré (Tempo)

シンプルな歌ものが多いこのアルバムですが、この曲は5拍子で作られています。

暖かくて優しい響きがあり、聴いていて落ち着いた気分になります。最初から最後までそういう空気に満ちていて、自然と癒されます。

Pars

アコースティックギターのゆったりとした音が心地良い曲です。

エンディングらしいポジティブさが響きの中に感じられます。印象的な表情を持ったサビが何度も繰り返され、その余韻のうちにアルバムは幕を閉じます。

まとめ

おそらく、このアルバムはGalaadの関連作という位置づけでしか聴かれないと思います。しかし、Pierre-Yves Theurillatのボーカルを違う方法で活かした作品としてこのL’escouadeはなかなかの水準を保っています。

また、自分のいる空間の雰囲気作りのためにフランス語で歌われている穏やかな音楽を何か聴きたい、という人にもおすすめできるかなと思います。

 

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