Žalvarinis: “Einam Tolyn” アルバムレビュー

リトアニアのネオフォークバンドŽalvarinisのアルバム“Einam Tolyn”(2018)を紹介します。

Žalvarinisのアルバム”Einam Tolyn”

Žalvarinis(ジャルヴァリニス)はリトアニアのネオフォークバンドです。

リトアニアの民謡をメタル風にアレンジして演奏するという音楽性でしたが、もうキャリアも長く徐々に音楽性を変えてきているようです。ネオフォーク系の音楽であることには変わりません。

この“Einam Tolyn”はバンドの5thアルバムにあたり、2018年に発売されています。バンド自体は2001年から活動しています。

トラックリスト

  1. Ryto Raga – 4:03
  2. Kadujo – 3:24
  3. O Kur Josim – 4:27
  4. Trep Trep – 3:50
  5. Oi Ta Ta – 3:48
  6. O Kai Saulutė Tekėjo – 4:32 ★★
  7. Palydėk Sesiula – 4:40
  8. Einam Tolyn – 4:14
  9. Broliams – 4:09
  10. Vai Žydėk – 3:52
  11. Žanijosi Mūsų Brolis – 4:22
  12. Dūzgia Bitela – 4:39
  13. Kalėda – 3:14
  14. Šių Naktelį Per Naktelį – 3:14
  15. Mo Li Hua – 2:44

各曲レビュー

Ryto Raga

優しいオープニング曲。

アコースティックギターの音と笛の音が平和な響きを生み出していて、リトアニアの朝のそよ風を浴びているような気持ちになります。

この曲は聴いていて心地良くなるのでおすすめです。

Kadujo

ロック的な激しさのある楽曲。

5拍子の鋭いイントロは聴き手を惹きつけます。メタルに近い音作りで、フォークファンでなくても飽きないと思います。

ボーカルは混成による合唱です。これにリトアニア民謡の雰囲気が出ていますが、サウンドは思い切りハードロック的です。

O Kur Josim

軽快なリズムの曲。ミステリアスだったりドラマティックだったりします。

全体的にはプログレッシブな展開を見せます。メロディが秀逸ですし、流れもかっこいいです。

最後に英語歌詞が使われているのもこの曲の特徴だと思います。ヨーロッパでは一つの曲の中で歌詞に英語と自国語を混ぜることは少ないので、珍しいと思いました。

Trep Trep

フルートが舞う民謡調の曲ですが、やはりこれもロックらしい快活さを持っています。

雰囲気は良いのですが、メロディがあまり良くないかなと思いました。

Oi Ta Ta

リトアニアのスター歌手Marijonas Mikutavičiusとコラボしています。ŽalvarinisのボーカルとMarijonasの両方が歌っています。

アップテンポで古き良きロックンロール的な曲調です。私はこの手のスタイルがあまり好きではないですが、Marijonasを知っているので彼が参加しているのが嬉しかったです。

O Kai Saulutė Tekėjo

リトアニアのネオフォークバンドUgniavijasと私の知らないAve Vitaというアーティストとコラボしています。このアルバムにはコラボ曲が多いです。

ミュージックビデオ。これを見る限り、Ave Vitaはコーラスグループのようです。

陰鬱な曲で、ドゥームメタルのような雰囲気もあります。曲自体はリトアニア民謡のようですが、民謡を重苦しくしたらこうなるのかと驚きました。

男性ボーカルが基本ですが、最後には女性ボーカルも参加して大合唱となります。ここは非常に素晴らしいです。エモーショナルなギターソロも用意されています。

このアルバムで最も気に入ったのがこの曲です。Ugniavijasもしっかり聴いてみようと思いました。

Palydėk Sesiula

これもUgniavijasとのコラボ曲です。

この楽曲もやはり重めの響きを持っていて、メタルのようです。私は激しいというより重い曲が好きなので、これも気に入りました。

個人的には前の曲の方が好きですが、この曲のギターソロは聴く価値ありです。

Einam Tolyn

アルバムの表題曲は、Veronika Povilionieneというアーティストとのコラボです。

少しだけゆったりとした楽曲で、メインボーカルは男性です。民謡調の歌い方が特徴的です。

異国的ではありますが、聴いていて落ち着くような曲です。

Broliams

アコースティックギターの音が優しい、繊細な楽曲です。

私はこの曲の持つ空気が大好きです。ミュージックビデオの雪も良いですね。

神秘的でもあり、あまりŽalvarinisらしくはないものの魅力的です。リトアニアの冬を感じさせてくれます。

Vai Žydėk

フルートによる暖かなイントロが美しいです。楽曲を支えるアコースティックギターの音も非常に良いです。

ゆったりとしたテンポから途中で速くなりますが、明るい雰囲気は変わりません。聴いていて癒されるような曲です。

Žanijosi Mūsų Brolis

この曲にもAve Vitaが参加しています。

スローテンポの楽曲で、不穏さを醸し出しながらも着実に進行していきます。

この曲の聴きどころは後半のあまりにも壮大な合唱です。ディストーションギターによる伴奏が感動を増幅させ、さらにとどめとしてこのギターが泣きのソロを歌い始めるので熱くなってしまいます。

Dūzgia Bitela

Veronika Povilionieneとのコラボ曲。

テンポは遅めで、民謡調のヘンテコな男性ボーカルの印象が強いです。しかし楽器の演奏には大人の雰囲気があり、おしゃれで素敵だな思いました。

Kalėda

原曲はリトアニアの冬の民謡です。

メロディが美しく、優しいハーモニーが聞けます。この曲を聴いた時、一発で気に入りました。

このようなアコースティック調で素朴な美しさのある曲が大好きです。これはリトアニアのフォークを聴くような物好きリスナーでなくても受け入れられる音楽だと思います。

Šių Naktelį Per Naktelį

珍しくハーモニカが使われています。ゆったりとしていて牧歌的な雰囲気が漂う平和な曲です。このアルバムの後半はこういう遅めの曲が多いような気がします。特にメロディが良いです。

Mo Li Hua

アルバムを締めるのはシンプルなフォークソングです。短いですが愛らしい響きがあって好きです。

16曲も収録されているアルバムですが、こういう耳当たりの軽い曲が多いので疲れることなく聴けます。

まとめ

私がまともに聴いたŽalvarinisのアルバムはこれまで2ndの”Žalio Vario”のみだったのですが、このアルバムを聴いてみて「Žalvarinisはこんなに素敵なアーティストだったのか」と感嘆しました。

それは、Žalvarinisはリトアニアフォーク界で特に好きなAistė Smilgevičiūtė ir Skylė, Pievos, Gyvataには劣るバンドだと思っていたからです。やはりアーティストに対する評価を下すときはディスコグラフィ全体をカバーしてからでないと良い音楽を見逃してしまいますね。

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