happysad: “Nie umiem kłamać” 楽曲レビュー

ポーランドのロックバンドhappysadのアルバム”Ciało Obce”(2017)に収録されている楽曲“Nie Umiem Kłamać”のレビューです。

ポーランドの若者に人気のhappysadについて

happysadは2001年にポーランドのSkarżysko-Kamienna(スカルジスコ・カミェンナ。ワルシャワとクラクフの間くらいの位置にあるみたいです)で結成されました。ジャンルはオルタナティブロックです。

現在大人気のロックバンド…ですが、「ポーランド人ならだいたい知ってるしどこかから情報流れて日本でも聴かれてるはずだよね」と期待して”日本語のサイトのみ”で検索してみるとポーランドのポピュラー音楽紹介で有名な方の記事しかヒットしませんでした。日本では全く知られていないんですね。そこで自分で記事を書いてみようと思いました。

happysadは2019年時点でスタジオアルバムを既に7枚リリースしています。

1. Wszystko Jedno (2004)
2. Podróże z i pod Prąd (2005)
3. Nieprzygoda (2007)
4. Mów Mi Dobrze (2010)
5. Ciepło/Zimno (2012)
6. Jakby Nie Było Jutra (2014)
7. Ciało Obce (2017)

最初はかなりストレートな曲が多かったのですが、作品を追うごとにだんだん洗練されてきています。特に5枚目まではノリが良くて楽しい曲が多くポーランドの若者も大満足だったと思います。

しかし6枚目”Jakby Nie Było Jutra”で急に音楽性が変わりました。このあたりの曲のYouTube動画のコメント欄はポーランドの若者たちの悲鳴で溢れかえっています。

その6枚目に続いて2017年1月には7枚目“Ciało Obce”(チャウォ・オプツェ)がリリースされましたが、ファンを困惑させた6枚目の方向性をさらに推し進めた作風で、初期の陽気さは完全に影を潜めてしまいました。

暗い音楽を聴くことの方が多い私にとってはこれくらいがちょうどよく、この”Ciało Obce”がhappysadの最高傑作だと思ったので今回はそこからの曲紹介を書きました。

楽曲について: Nie umiem kłamaćに見るhappysadの進化

Nie umiem kłamaćは「ニェ・ウミェム・クワマチ」と読み「俺は嘘をつけない」という意味のタイトルです。嫌いなものがたくさんあるけどそんなの正直に言ったらまずいから我慢していますという歌です。”Ciało Obce”に収録されています。

この曲はアルバムの3曲目に位置していて、先行する2曲は独立性の薄い短い曲であるためオープニングと捉えることもできます。

happysadはわかりやすく言えば「大人になった」んだと思います。

歌は平坦な表現を避けて囁くような部分と叫ぶような部分の差を使うようになりました。

ギターはディストーションをかけた上で高音をアクセントに使ったり楽譜に表せない音使いを増やしたりして、昔のようなリズムを刻むだけの演奏の割合を減らしています。

キーボードはデジタルな音を多彩に操って現代的なイメージを作り出し、リズム隊は各曲にシンプルながらも印象的な型を作ることでキーボードと共にエレクトロニカ的要素を生み出しています。

1:14~2:04あたりでは、サビの激しくもどこか冷たいサウンドやそれに続く間奏での打撃、それを受けた2番の入りでの不協和音の使用など、音使いにおける成長が顕著に表れていると感じました。

最後に

アーティストの音楽性の変化は常にファンの分裂や反発を招きますが、それに対して声を上げるにしろ上げないにしろ本人の意図を尊重する姿勢を忘れてはいけないというのが私のリスナーとしてのスタンスです。

個人的には次回作でも新しいことをしてくれるのを期待しています。

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