ポーランドの若手プログレッシブロックバンドWalfadのアルバム“Colloids”のレビューです。
目次
Walfad
Walfad(ヴァルファト)はポーランド南部出身のプログレッシブバンドです。メンバーが高校生だった2011年に結成されました。
WalfadというのはWe Are Looking For A Drummerの略で、当時ドラムを担当していたメンバーがリハーサルに全然来なかったことから冗談でつけられた名前です。
バンドは2013年に1stアルバム“Ab Ovo”、2014年に“An Unsung Hero, Salty Rains And Him”、2016年に“Momentum”、2018年に“Colloids”を発表しています。2ndアルバムからはそれぞれポーランド語盤と英語盤が発売されており、世界進出への意欲が窺えます。
私はこのバンドのライブに行ったことがあり、メンバーにも会ったことがありますが、特にリーダーでギター・ボーカルのWojciech Ciuraj(ヴォイチェフ・チュライ)は頭の良い好青年です。
ライブレポートも記事にしているので併せてどうぞ。↓
他にアルバムレビューもあります。↓
Walfadはアルバムを出すごとに良くなっており、成長速度が非常に速いので将来が楽しみなバンドです。
ではアルバムの紹介に入りましょう。
トラックリスト
- Intro – 2:04
- W Kotle – 4:19
- Synowie Syzyfa – 5:23 ★
- Koloidy – 10:16 ★
- Rdza – 5:39 ★
- Brudne Pisanie – 6:54
- Chodzić po Wodzie – 4:53
各曲レビュー(Recenzje poszczególnych utworów)
Intro
7曲しかないアルバムですが、1曲目はイントロです。
今までの作品にはほとんどロックサウンドしかありませんでしたが、ここでは大胆な加工による浮遊感のある序奏が聴けます。
W Kotle (In a Powder Keg)
5+6の複合変拍子による長いイントロで幕を開けます。Jakub Dąbrowskiによるドラムによる打撃が印象的です。
Wojciechのボーカルは最初からテンションが高く、バンド演奏にも迫力があります。テンポは速くないのですが、インスト部分はよく練られていて複雑です。
今までのWalfadはある意味おとなしい演奏をしていたのですが、この楽曲には無理やりにでも耳に届いてくるような力強さがあります。
Synowie Syzyfa (Sisyphus’ Sons)
前の曲から空白無しで続きます。メロディが美しい曲です。
何の楽器かわかりませんが、特徴的な音色をした弦楽器が醸し出す異国的な雰囲気と、美しいながらもどこか独創的なボーカルメロディが印象的です。
Wojciechは高めの声質をしていて、生でも歌が上手です。この曲ではボーカルが目立つのでよく聴いてみて下さい。
後半はインストパートで、ゆるやかに加速していきながら演奏が続きます。バンドがアルバムを発表する前に「即興的な要素を増やした」と発表していましたが、こういうところにそれが表れているようです。
Koloidy (Colloids)
タイトル曲で、長さは10分以上あります。
しっとりと始まり、少しずつ展開していきます。前半で聴けるギターソロはロックというよりはもっと大人な雰囲気を持っています。
中盤では不穏で緊張感に満ちたボーカルパートがあり、Walfadのダークな部分が垣間見えます。
後半はリズムを変えてアグレッシブなインストパートが始まります。ギターの演奏に注目です。
長さは違いますが、2ndアルバムに収録されていた18分を超える大曲”Liście”(Leaves)に近い組曲的な構成です。
Rdza (Rust)
少し”Synowie Syzyfa”を思わせるような雰囲気を持っている曲です。
やはりメロディが美しく、清涼感が感じられます。ギターの音色も特徴的ですが、聴いていて心地良いです。
後半はインストパートになっていて、長いギターソロが聴けます。このアルバムにはギターソロが多いですが、Wojciechが弾いているのでしょうか。前回のアルバムの素晴らしい最終曲”Nasi Bogowie, Wasi Bogowie”ではゲストミュージシャンがギターソロを弾いていたので、今回はどうなのか気になります。
ギターソロの後はによるキーボードソロが続きます。ここはプログレッシブロック然としています。
Brudne Pisanie (Jottings)
このアルバムで最もヘヴィな楽曲です。ボーカルにはエフェクトがかかっており、ギターにもディストーションがかかっています。
後半はゆったりとして雰囲気のあるパートになっており、壮大なインストが聴けます。どちらかというとボーカルパートよりもこの部分の方が気に入りました。
Chodzić po Wodzie (To Walk on the Water)
ギターのコードストロークによる5拍子のイントロで始まります。演奏には控えめながらも風格があります。
この曲もダークで、変拍子によって生み出される緊張感もあります。薄闇の中で響くような楽曲です。