ポーランド留学中に大学で受けた授業の紹介です。今回はHistoria i kultura regionówという科目です。
授業の構成・講師
これは国際ポーランド学学科の学士課程一年生向けの授業です。私が受けたのは講義で、演習もあったかどうかは覚えていません。
先生はポーランド言語文化学校という外国人向けのポーランド語講座を開講している大学傘下の組織の校長で、ポーランド語の教材も書いている人です。
カトヴィツェがあるシロンスク地方出身の女性の典型で、強烈なキャラクターを持っていて威圧感もあります。この人は世界の言語という授業も教えてくれていました。
講義の内容
この授業では、ポーランドの各地域の文化と言語を中心に学びました。科目名には歴史とありますが、歴史はあまり勉強していません。
ポーランドは言語・文化の観点から大きく6つの地域に分けることができます。
・北西部のバルト海に面した地域ポモジェ(グダンスクなど)
・北西部の昔からある地域ヴィェルコポルスカ(ポズナン、トルン、ブィドゴシュチュなど)
・北東部に位置し、湖沼地帯マズルィなどがある地域マゾフシェ(ワルシャワ、ビャウィストク、オルシュティンなど)
・南東部の昔からある地域マウォポルスカ(クラクフ。ジェシュフなど)
・南部の炭鉱で栄えた地域シロンスク(カトヴィツェ、オポレなど)
・西部にある戦後得た領土(ヴロツワフ、シュチェチンなど)
このうち、ポモジェと戦後得た領土を例外として残る4つの地域はそれぞれ方言的な特徴を持っています。
さらにポモジェ地方ではカシューブ語という独自の言語が使われており、一方で戦後得た領土では色々な方言が混ざるか標準語に近くなっていて、新混合方言と呼ばれます。
旧東部領土(現在リトアニアに属するヴィリニュス・現在ウクライナに属するリヴィウなど)に住んでいたポーランド人が戦後この土地を失ったときに、代わりに得た西部領土(旧ドイツ領)に移住してきたためです。
大学がシロンスク地方にあるということで、シロンスク地方の方言と文化を中心に勉強しました。
ここでいうシロンスク地方とは、カトヴィツェ、チェシン、オポレなどのある通称Górny Śląsk(上シロンスク)のことです。ポーランドにはヴロツワフなどを含むDolny Śląsk(下シロンスク)という地域もあり、どちらが本物のシロンスクなのか両地域の住民が論争を繰り広げています。
上シロンスク地方にはシレジア語という方言があり、自分はシレジア人だというアイデンティティ意識を持つ人たちがシレジア語を独立した言語として認めるよう政府に要求しています。
上シロンスクは3つの地域に分けることができ、それぞれの名前はオポレ・シロンスク、カトヴィツェ・シロンスク、チェシン・シロンスクとなります。それぞれの地域で方言の特徴も民族衣装も文化も違うので、上シロンスクという言葉で全ての地域をまとめるのは難しい、ということも学びました。
さらに授業では上シロンスク地方の郷土料理や宗教文化、祝日の伝統なども学びました。
ゲスト講師が来てくれた授業も二回ありました。一回目はグダンスク大学のカシューブ語科で教えているカシューブ語学者による授業で、二回目は隣国ベラルーシの首都ミンスクの大学の先生の授業でした。上シロンスクだけでなく他の場所についての話も聞くことができて、視野が広がりました。
まとめ
この授業は当時も面白いと思っていたのですが、ここで学んだことが実際に生きたのはポーランド人と触れ合う時です。ポーランド人は私のような外国人にポーランドの歴史や文化を教えてくれます。その時に、この授業で得た知識があるとそれをより深く理解することができたのです。
そういう意味で、これは大事な授業だなと思いました。実はこの授業を通して方言学にも興味が出てきました。