ポーランド留学中に大学で受けた授業の内容について、1学期分しか書いていなかったので2学期の授業についても書くことにしました。
1学期の授業内容についてはこちらの記事で読めます。→[ポーランド留学]ポーランドの大学の授業内容・1学期目
所属について
私のポーランド留学は、外国人向けのポーランド語講座を受講しながら大学の聴講生をするというものでした。1学期目はポーランド人だけでなく外国人も多い国際ポーランド学学科(Międzynarodowe Studia Polskie)で聴講をしていた私ですが、2学期目はポーランド語学科(Filologia Polska)での聴講許可が下りたためさらに面白い学期になりました。
もちろん、国際ポーランド語学科での聴講も続けました。結果的に聴講授業のコマ数が4から8に増えることになりました。それぞれ大まかに紹介していくことにします。もちろん全てポーランド語で行われる授業です。
国際ポーランド学学科の授業
Literatura polska po 1918 r.
1918年以降のポーランド文学です。
第一次世界大戦が終わった1918年をポーランド文学の新時代の始まりとして、理論も同時に勉強しながら詩と短編小説を中心に読んでいきました。
授業ではJulian Tuwim, Maria Pawlikowska-Jasnorzewska, Julian Przyboś, Witold Gombrowicz, Józef Czechowicz, Czesław Miłoszなどの作品を実際に読んで解釈していきました。
個々の作品に触れるだけでなく、ポーランド文学の時代区分、作風を表す用語、キリスト教特有のメタファーなども学ぶことができました。
宿題も多めで、作品を読み込むのは家での作業でした。自分で読んでいてわからないところは、文学を得意とするポーランド人の彼女が毎回説明してくれました。
Polszczyzna współczesna
現代ポーランド語です。国際ポーランド学学科の学生と中国からの留学生が一緒に受けている授業で、他の科目に比べてレベルは低めでした。
ポーランド語の規範文法にならって、ネイティブがよくやる間違いや自信がないという理由で使うのを避けがちな表現を取り上げて正しい形を学んでいきました。
さらに、ポーランド語の様々な文体を比較し特徴をまとめるということもしました。
Język polski na tle języków europejskich
ヨーロッパ諸言語の中におけるポーランド語です。これは修士課程1年生向けの授業です。
ヨーロッパの大まかな言語事情を把握してから、その中でのポーランド語の立ち位置について勉強しました。歴史言語学的な話題も、類型論的な話題も登場しました。
ウクライナから講師がやってきてロシア語・ウクライナ語・ポーランド語の違いについて講義をしたり、マケドニアからの留学生が古代教会スラヴ語を作ったキリルとメフォディ兄弟についてのプレゼンテーションをしたりもしました。
Literatura polska do 1918 r.
1918年以前のポーランド文学です。失礼ながらこの授業は途中で切りました。そのため先に書いた7コマの中にカウントしていません。
毎回講義と演習の2コマあり、理論と実際のテキスト両方に触れました。1918年以前といっても近代文学が中心で、私が受講していた時点では短編小説をやっていました。
この時期週末にヴロツワフに通い始めていたので金曜日にあるこの科目をできるだけ受けたくなかったこと、文学よりもポーランド語学科の言語学的な授業に重点を置きたかったこと、先生が合わないと思ったことが理由で通うのをやめました。
ポーランド語学科の授業
Fonetyka historyczna języka polskiego
ポーランド語歴史音声学です。私が最も好きだった科目です。
ポーランド語の様々な単語からスラヴ祖語形を再構し、さらに再構形から現在の形になるまでに起こった音韻変化を一つずつ時系列的に説明するという作業ができるようにする演習です。
この作業は非常に楽しく、ポーランド語の歴史文法に関する知識を習得することができるので受けて良かったと思いました。なお、ポーランド人が9割以上のクラスですが私の成績が最も良かったです。
Fleksja i składnia języka polskiego
ポーランド語の語形変化と統語論です。
現代ポーランド語を分析する授業で、前半ではポーランド語の品詞の分類、あらゆる語形変化の形態論的分析をし、後半ではポーランド語の統語論を勉強しました。
この授業は先生が良かったこともあり非常に楽しく受けることができました。私が受けたポーランドの大学の授業では指定の教科書が名ばかりで実際はほとんど読まないことが多かったのですが、この授業では教科書をがっつり読むことと例題を解くことが宿題だったので家での勉強量も多かったです。
この授業にはここまで説明した演習だけでなく講義もありましたが、ほとんど休講になって実質的にはあまり意味がなかったのでほとんど講義の方はコマ数にカウントしませんでした。
Hisoria języka polskiego
ポーランド語の歴史です。修士課程1年生向けの授業です。
歴史文法と言語の歴史は似ているように見えて別物で、アプローチも異なります。ポーランド語史における重要な出来事や文献を学ぶのが中心で、古いテキストの表記法や文法の分析、現代ポーランド語の感覚だけでは起源が推測できない表現の謎解きなどをしました。
この科目には課題としてレポートもありました。一人ずつ割り当てられた単語の意味変化を調べてまとめるのがテーマで、私にはkabelという単語が当たりました。A4用紙5ページほどで書き上げました。
Język staro-cerkiewno-słowiański
古代教会スラヴ語です。
ポーランド語の勉強とは直接関係ありませんが、ポーランド語の研究にとっては重要な言語です。なぜなら、古代教会スラヴ語派はスラヴ語派の言語のうち最初に成立し文献として残っている言語だからです。
日本でも教科書が出ていますし、いくつかの大学では古代教会スラヴ語を教えていると聞きました。しかし、この言語の知識を持っている人は少ないです。対して、ポーランドではポーランド語学科の学生の必修科目になっています。私の留学していた大学では1年生の科目でした。
私はポーランド語学科の聴講許可が下りたときにシラバスを渡され、どれでもとりたいどれでも授業を選んで先生と交渉してくださいねと言われたのですが、古代教会スラヴ語は真っ先に選びました。
留学前に日本語で出ている古代スラヴ語の教科書を買って留学が終わったら始めようと思っていたのですが、幸運にもポーランドでその授業を受ける機会を得たのです。
2週間に1回しか行われない授業で回数は少なかったのですが、楽しく勉強することができました。
まとめ
以上が私の受けた授業の概要です。どれも勉強になりました。
別記事として一つ一つの授業について詳しく書いていく予定です。