ポーランド語文法: 文法性は3種類ではなく5種類、いや9種類!?

今回はポーランド語の名詞の性に関する豆知識的なお話です。

ポーランド語の性

ポーランド語の性の数はいくつあるでしょうか。

ポーランド語を学んでいる方なら、ポーランド語には男性・女性・中性という3つの文法性があり、複数になると違った方法で男性人間・非男性人間の2つに区別するということを先生なり教科書なりから教わったことでしょう。つまり、

男性: rodzaj męski
女性: rodzaj żeński
中性: rodzaj nijaki

まずこの3種類に名詞が分類され、複数で使われると

男性人間: rodzaj męskoosobowy
非男性人間: rodzaj niemęskoosobowy

という別の分類が適用されるという考え方です。

しかし、人間を表す男性名詞かどうか、という男性人間・非男性人間の区別はポーランド語特有のためあまりしっくりきません。その上、全ての名詞が単数のときと複数のときで違う性を持つ、つまり名詞が二重の性を持ってしまうというややこしい状態が生まれます。

しかし、性は3種類というのは絶対ではありません。ポーランド語研究の中には性をさらに細かく分類しているものもあるのです。

性は5種類?

それを解決しうる斬新な説がこちら。ポーランド語の名詞は5種類に分類されるという考え方です。

1. 男性人間………rodzaj męskoosobowy
2. 男性活動体……rodzaj męskożywotny
3. 男性物体………rodzaj męskorzeczowy (またはrodzaj męskonieżywotny)
4. 女性……………rodzaj żeński
5. 中性……………rodzaj nijaki

女性・中性はそのままで、男性名詞が3つに分かれました。

これは男性名詞の対格と生格での語尾変化に注目した分類です。男性人間の代表をpracownik(従業員)、男性活動体の代表をkot(猫)、男性物体の代表をdom(家)として考えてみます。

pracownik(男性人間)

単数対格 pracownika = 単数生格 pracownika
複数対格 pracowników = 複数生格 pracowników

kot(男性活動体)

単数対格 kota = 単数生格 kota
複数対格 koty ≠ 複数生格 kotów

dom(男性物体)

単数対格 dom ≠ 単数生格 domu
複数対格 domy ≠ 複数生格 domów

色をつけた部分に注目すると、この3つの男性名詞にどういう違いがあるのかがわかると思います。単数・複数それぞれにおいて、対格と生格の形が一致するかどうかを見てください。この点で男性名詞は3つに分かれるのでポーランド語の名詞の性は計5つあり、単数と複数で別々に考える必要がないというのです。論理的ですね。実際、この分類は意外と一般的になってきています。

性は9種類?

ここからはポーランド語の文法性をなんと9つにまで分類してしまうポーランド語学者さんの考え方を紹介します。

彼の名はZygmunt Saloni。私はポーランドの大学でのポーランド語記述文法の授業で彼の書いた本を教科書として使っていました。

どうすれば文法性をそんなに細かく分類できるのか、さっそく紹介していきます。

1. rodzaj męskoosobowy… 男性人間
2. rodzaj męskożywotny… 男性活動体
3. rodzaj męskonieżywotny… 男性非活動体
4. rodzaj nijaki pierwszy… 中性第1
5. rodzaj nijaki drugi… 中性第2
6. rodzaj żeński… 女性
7. rodzaj przymnogi osobowy… 複数限定人間
8. rodzaj przymnogi nieosobowy pierwszy… 複数限定非人間第1
9. rodzaj przymnogi nieosobowy drugi… 複数限定非人間第2

日本語にはまだ訳語がないと思われるので勝手に名前をつけました。
それぞれにどういう名詞が属するのか説明しましょう。

1. rodzaj męskoosobowy… 男性人間

伝統的な分類と同じように、男性の人間を表すもの。Japończyk(日本人), student(学生)など。

2. rodzaj męskożywotny… 男性活動体

単数で対格が生格と同じ形になる、動物などを表すもの。pies(犬), kot(猫)など。

3. rodzaj męskonieżywotny… 男性非活動体

男性名詞のうち生き物以外を表すもの。dom(家), słownik(辞書)など。

4. rodzaj nijaki pierwszy… 中性第1

これは中性名詞のうち、数詞をつけるときに集合数詞を使うもの。dziecko(子ども), pisklę(鳥のひな)など。
dzieckoを例にとると、「2人の子ども」と言いたいときに*dwa dzieckaは不可で、集合数詞で2という数字を表すdwojeを使ったdwoje dzieciという形が正しくなります。

5. rodzaj nijaki drugi… 中性第2

これは中性名詞のうち、数詞をつけるときに普通の数詞を使うもの。jajko(卵), morze(海)など。

6. rodzaj żeński… 女性

女性名詞は全てここに入ります。

7. rodzaj przymnogi osobowy… 複数限定人間

複数でしか現れない名詞のうち、男性人間的性格をもつもの。rodzice(両親)など。動詞の過去形が-liになることが特徴です。

8. rodzaj przymnogi nieosobowy pierwszy… 複数限定非人間第1

複数でしか現れず人間を表さない名詞のうち、集合数詞を使って数えるもの。drzwi(扉)など。例えば、扉が2つあるときはdwoje drzwiと表現します。

9. rodzaj przymnogi nieosobowy drugi… 複数限定非人間第2

複数でしか現れず人間を表さない名詞のうち、名詞paraを使って数えるもの。spodnie(ズボン)など。例えば、ズボンが2着あるときはdwie pary spodniと表現します。

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