イギリスのロックバンドAnathemaのアルバム”Weather Systems”(2012)に収録されている楽曲“Untouchable Part 1”のレビューです。
Anathema “Untouchable Part 1”
Anathema(アナセマ)は私の愛するイギリスのロックバンドです。1990年にビートルズを生んだイングランドのリヴァプールで結成され、2018年現在までコンスタントに活動を続けています。
Anathemaは何度もスタイルを変えてきたバンドであり、大まかに言えば1st, 2ndでドゥームメタル、3rdでゴシックメタル、4thから7thまでは独特の薄暗ロックを演奏してきて、7thから7年空けての8thアルバム”We’re Here Because We’re Here”で一気にプログレッシブ・ポストロック的なスタイルを開花させました。
9thアルバムでありこの“Untouchable Part 1”をオープニングに据えた“Weather Systems”は、8thの方向性を継承しながらさらに磨きのかけられた作品です。 なお”Untouchable”はこの曲のPart 1という表記からも推測できる通り2部構成の作品で、Part 2は同じメロディをテーマにスローテンポで感動的に展開されます。
私はこの組曲がAnathemaの最高傑作の一つだと思っており、これをライブで聴けたときは感動しました。その時はポーランド・ワルシャワでのライブだったのですが、アンコール前最後の曲としてPart 1, Part 2をまとめて演奏してくれました。Part 1のサビでは観客のほとんどが本気で合唱していたのを覚えています。
楽曲のレビュー
明るい響きのギターアルペジオによるイントロに続いて、落ち着きながらも爽やかなボーカルが聴けます。アルバムのテーマである天気にかけて表現すれば、この部分は雲の間から微かに光が射し込んでくるような感覚です。
コーラスワークが心地よく、元気のない時でも背中を押してくれるような響きなので、私はよく気分が落ち込んだとき、やる気を出したい朝などにこの曲を聴いています。
後半部ではギターの高速ストロークによる轟音と極力なドラムの打撃によって生み出される音の嵐の中、ボーカリストとしてすでに最高レベルに達したボーカル・ギターのVincent Cavanaghが情熱を歌声に変えてぶつけてきます。
この後半部のような盛り上がりはこの時期のAnathemaの持ち味で、音の圧力にまかせて無理やり感動させているように思えて実はそうではなく盛り上げ方が上手だし楽曲の質自体が高い、というところが評価されている理由だと思います。
私は音楽にリズムやノリの良さをあまり求めないタイプで、友達などがよく言う「リズムが良い」という楽曲の褒め方は全くしないのですが、この曲の魂を鼓舞するようなリズムは”Untouchable Part 1″に込められた感情と熱さを伝える上で不可欠なのではないかと感じました。