ポーランドのプログレッシブロックバンドAnankeのアルバム”Shangri-la”に収録の楽曲“Luna”のレビューです。
Ananke
Ananke(アナンケ)はポーランド・Bydgoszcz(ブィドゴシュチュ)出身のロックバンドです。
1987年に同じくブィドゴシュチュで結成され1996年から2000年にかけて活躍したプログレッシヴ・ロックバンドAbraxasの結成メンバーであるボーカルのAdam Łassa(アダム・ワスサ)とキーボードのKrzysztof Pacholski(クシシュトフ・パホルスキ)の二人によって2009年に結成されました。
そのまま「アナンケ」と読みます。ギリシア神話の女神の名で、宿命と必然を表します。残念ながら現在活動情報が入ってきていません。もう活動していないようです。
Abraxasは演奏能力の高さと各メンバーの個性を活かして極端な表情を演劇のように変幻自在に使い分け、その上にAdamのカトリック的世界観をベースに他宗教やオカルトへの強い関心を反映した不可解な詞と個性的すぎる歌が乗る不思議な音楽でした。
Abraxasの解散から9年経って結成されたAnankeは、Abraxasの凶暴性を排除して陰鬱さと神秘的な雰囲気を強調した音楽を作っています。
AbraxasにはSzymon Brzeziński(シモン・ブジェジンスキ)というメタル趣味を隠しきれない作曲兼エレキギターのメンバーがいて、良くも悪くもこの人の力が強かったのです。
しかし、Anankeの作曲担当はAbraxasをデビュー前に脱退していたKrzysztofです。Abraxasの楽曲にもKrzysztof作曲のものがいくつかありますがそれともまた違った印象で、よりAdamの世界観や嗜好に合った音楽になっていると思います。
私はAnankeを聴くときは必ず集中して、空気感や細かい表現を最大限に感じ取ろうとします。元々そういう聴き方に向いた音楽が好きなんです。
Adamは個性的な声をしていて、歌ではなくインタビューなどで彼の声を聴くと、普通の男性よりもかなりトーンが低く落ち着いて話すため声が心地よく振動しているのがわかります。
歌があまり上手くないのでAnankeのようにテンポの遅い曲を歌うとそれが顕著に現れますが、私は彼のファンなのでそれも味として聴いています。
楽曲レビュー
さて、Lunaという曲についてはあまり説明しないので、聴いて実際に体験していただけたらと思います。
補足情報ですが、タイトルのLunaは単純に天体としての月を指しています。Adamのメッセージは以下のようなものです。
「自分たちのものに似た惑星系が宇宙には何億もあり太陽のような何十億もの星が何十億もの惑星を照らしているという事実を前に、なおも宇宙で人類だけが存続できると信じるのは無知ではないか、現にすぐ近くの月にも外的文明の痕跡が見つかっているではないか、もしかしたら一般人があまり多くを知りすぎないよう誰かが仕組んだのではないか」
副題のArtefaktyは人工物のことで、月面に人工物が存在する説が題材みたいです。
私は陰謀論者ではないものの、こういう話は嫌いではないですしむしろたまに読みたくなるタイプです。私は外的で未知のものよりも人間の内面への興味の方が強いので、月に文明が存在するかどうかはあまり考えずに生きていますが。
バンドの出身国ポーランド
ポーランド語がわかるとAdamの胡散臭さがわかって2倍楽しめるのですが、私にとっては彼が好きすぎたのがポーランド語の原点です。
しかしここまできて気付いたのは、言語以上にカトリック的世界観が理解の壁であり、そもそも彼の思考がポーランド人にも理解しがたいほどに謎めいているということでした。
ちなみに私はブィドゴシュチュに行ったことがありますが、非常に美しい街でした。
Adam Łassa関連のディスコグラフィ
Abraxas
-1996 Abraxas
-1998 Centurie
-1998 Prophecies (Centurieの英詞バージョンです。絶望的に入手困難)
-1999 99
-1999 99(英詞バージョン。入手困難)
-2000 Live in Memoriam (ライブ盤で傑作。人生で最も衝撃を受けたアルバムの一つです)
Assal & Zenn (Abraxas結成メンバーŁukasz Święchとの共作)
-2004 Assal & Zenn (入手困難)
Ananke
-2010 Malachity
-2012 Shangri-la(Luna収録)
-2013 Cantarella (デジタルシングル、英詞)
-2015 Linea Negra (メールによる短期間限定配布)
Assal(ソロ)
-2015 Ciało i Duch (最近あまり見かけません)
Marilliusz & Assal
-2015 The Presja (詩の朗読をしているオーディオブック)
彼のCDは全て集めましたがどれも好きな作品です。日本にもこのあたりをご存知の方がたまにいらっしゃるので、そういう方はぜひコメントでお知らせください。嫌いな方もぜひ。