これは私の裏の専門分野、ポーランド語歴史文法を大雑把に紹介する記事です。
何を勉強しているのか
実は1年間のポーランド留学で2学期目からポーランド語学科の科目の受講許可が下り、歴史音声学、屈折・統語論(現代ポーランド語の)、ポーランド語の歴史、古代教会スラヴ語の授業に通っていました。
その他に前学期に通っていた国際ポーランド学学科の授業とポーランド語コースも引き続き受講。全体的に前学期よりかなり勉強量が多くなりました。
ポーランド学科の学生は9割がポーランド人なので私はポーランド語運用能力で大きく劣りますが、授業の理解度ではむしろ優っているという印象でした。外国人だからこそ直感を捨ててポーランド語を見つめることができるというのが理由の一つかもしれません。
私が自主学習に使用している教科書は全て自分で集めたものですが、メインとして利用しているものは以下の3冊です。
・ポーランド語歴史文法(Gramatyka historyczna języka polskiego; Krystyna Długosz-Kurczabowa, Stanisław Dubisz著)
・古代教会スラヴ語文法(Podstawowe wiadomości z gramatyki staro-cerkiewno-słowiańskiej; Czesław Bartula著)
・スラヴ諸語比較文法(Zarys gramatyki porównawczej języków słowiańskich; Zdzisław Stieber著)
どれもずっと知りたかった情報が詰まった本なので暇な時間に自分で読み進めています。
このうちポーランド語歴史文法は歴史音声学の教科書、古代教会スラヴ語文法は古代教会スラヴ語の授業の教科書に指定されていました。授業全般で自分で読んだ分の知識が役立つのも気持ちが良かったです。
ポーランド語歴史文法についてはStanisław RospondのGramatyka historyczna języka polskiegoも持っていますが、先に挙げた別著者のものの方が大幅に良い評判を得ているので時々補足的に参照する程度です。
私が最も強い興味を持っているのがポーランド語の歴史文法。これは時の流れとともにポーランド語の内部で起こった変化を研究する分野です。
ポーランド語の歴史文法では、ポーランド語が属するインド=ヨーロッパ語族の諸言語の祖先であるインド=ヨーロッパ祖語からその分派であるスラヴ語派の諸言語の祖先であるスラヴ祖語を経由してポーランド語が形成され始めた10世紀から始まるポーランド語の発展を追っていきます。
この分野の関心は一つの言語(ポーランド語)の内部事情ですが、言語を研究するにあたっては外的要因を無視することができないので「ポーランド語の歴史」はそこをカバーする役割を果たしています。
読まれなくても書く
私の好きな分野だと言いましたが、重大かつ単純な問題が一つあります。それは需要の問題。ポーランド語歴史文法の話をしたくても日本で紹介する意味があるのかはわかりません。
何を書くにも読み手がポーランド語を知っているというのが前提になりますし、その中には「ポーランド語が話せれば言語の歴史なんて知らなくても大丈夫じゃん」という人もいると思います。
ポーランド語を勉強している人すらほとんどいない日本でこの分野を語ってしまうと、読み手が本当に一握りになることは避けられません。
しかし以前南スラヴ語学専攻の方がブログでスラヴ語比較文法について書いていたのを読んでこの上なく嬉しくなったことがあるので、そういう方が読んでくれることを願いつつポーランド語歴史文法についての記事を書いていこうと思います。