[ポーランド留学]ポーランドの大学はどういうシステムなの?

このブログではポーランド留学中に受講していた授業を一つずつ紹介していますが、そもそもポーランドの大学はどのようなシステムになっているのかを書くべきだなと思ったので、この記事にまとめます。

ポーランドの大学にはどのような種類があるのか、大学には何年通うのか、どうやって授業を受けるのか、単位をとるための条件は何か、単位を落とすとどうなるのか、などについて詳しく解説していきます。

前置き

私はポーランドのカトヴィツェ・シロンスク大学(Uniwersytet Śląski w Katowicach)というところに留学していました。彼女はヴロツワフ大学(Uniwersytet Wrocławski)に通っています。

この記事に書いている内容は、「シロンスク大学でもヴロツワフ大学でも同じだったのでポーランドの大学に共通のものなのだろうと仮定した事項」です。

私はポーランドの大学のうち文献学部(日本でいう外国語学部や文学部)しか見たことがなく、ポーランドの大学について教えてくれる友人たちもまた文献学部の人です。もしこの記事の内容について「全部が全部そうではないよ」という指摘がありましたら、ぜひお知らせください。

ポーランドの大学に入るまで

ポーランド語では大学で勉強することをstudiaと言います。英語のstudyと同語源なので覚えやすいはずです。

大学に入る(=studiaを始める)には、高校卒業試験(matura)を受けてその結果とともに出願をし、大学側に受け入れられなければなりません。点数が高くないとレベルの高い大学には入れませんが、入学条件は日本ほど厳しくないため、特別成績が良くなくても有名大学に入ることはできます。

maturaでは、必須の国語・数学・外国語を除いて受験科目は自由です。それぞれの大学が出願に必要な科目を定めているため、それぞれの生徒が受ける科目は違います。

maturaは日本のセンター試験にも似ていますが、大学入学試験ではなく高校卒業試験であり、不合格になると高校卒業の資格が得られないという点で異なります。そして、科目によっては口頭試験もあります。ちなみに、不合格になった場合や結果に不満がある場合は、受け直しが可能です。

また、ポーランドの高校は教育の区分上「中等教育」です。日本の高校も区分上は「中等教育」であり、自分の学歴を証明する場合には注意が必要です。

ポーランドの大学の種類

高等教育機関の中には、正式な大学(uniwersytet)として認められているものとそうでないものがあります。

大学名にuniwersytetとついている大学は全て正式な大学で、ほとんどが国立です。国立の総合大学は18あり、私立のものが2つあります。

その他に、専門系の大学もあります。芸術大学、経済大学、医科大学、教育大学、農業大学、技術大学あたりがそうです。

高等教育機関としてwyższa szkołaというタイプのものもあります。こちらは正式な大学よりもランクが低いのですが、中にはそこでしか受けられない教育を求めて頭の良い人たちが集まるようなwyższa szkołaもあります。

国立大学の学費は、ポーランド人学生の場合基本無料です。国立大学の例外的な状況(専攻を2つにする、転学部をするなど)や国立大学以外の高等教育機関については、何が有料で何が無料なのか複雑すぎてよくわからないので無理して書かないことにします。

ポーランドの大学には何年通うのか

日本では4年制の大学を卒業すると学士号が取得でき、さらに2年間大学院に行くと修士号がもらえます。

ポーランドでは、学士課程3年間・修士課程2年間という構成になっていて、ほとんどの学生が修士号を取得します。そのため、ポーランドでは5年間大学に行くのが一般的です。

もちろん学士号を取得した時点で教育を受けるのをやめることも可能ですし、学士号ととった後に別の専門分野または別の大学で修士課程を始めることもできます。

専門が何であれ、ポーランドで大卒で就職する場合は修士号を持っていることが前提なので、学士で就職しようとすると少し不利になります。

また、ポーランドの大学では脱落者が大量に出ます。大学に入ること自体は難しくない割に、進級・卒業するのが難しいからです。落第して退学する学生のほとんどは1年生の1学期を終えることができません。1年生の2学期で落第する人もいます。2年生に進級することができれば、そのまま卒業まで行けると考えていいと思います。

日本では入学者のほとんどが卒業できますが、ポーランドでは勉強を頑張らないと卒業する前に脱落するので、ポーランドの大学を卒業するのはしっかり勉強する人ばかりです。もし今突然日本の大学がポーランド並に厳しくなったら、日本の大学生のほとんどは卒業できないと思います。

ポーランドの大学の授業

選択科目は日本の大学より少ないので、ほとんどの学生が同じ授業をとることになります。

ポーランドの大学の授業には講義(wykład)演習(ćwiczenia)の2種類があります。講義は教授の話を聞く授業で、演習は学生参加型の授業です。

1つの科目に対して講義と演習の両方があるか、講義だけがあるか、それとも演習だけがあるかは科目によります。講義と演習の担当教員が別であることも珍しくありません。

講義では基本的に出席が義務付けられていません。先生によっては出席がとられますが、原則としては出席するもしないも自由です。その代わり、講義を聞いていないと試験で答えられないこともあります。

演習では出席が義務付けられています。ポーランドのスタンダードでは、欠席は2回までしか許可されません。日本よりも厳しいですが、3回以上欠席しても場合によっては単位がもらえることがあるのが実情です。

演習では指導教員との距離が近いので、宿題の提出状況、授業での参加意欲、小テストなどが評価基準になります。授業によってはレポート(praca semestralna)やプレゼンテーションが課せられることもあります。

試験(egzamin)が学期末にしか行われないのに対し、演習ではkolokwiumというタイプのテストが行われることも多いです。これは演習で勉強した内容が身についているか確かめるもので、評価基準にもなります。

試験期間(sesja egzaminacyjna)前の最後の演習の授業で指導教員が学生の評価を決め、単位認定(zaliczenie)を出します。評価は2, 3, 3.5, 4, 4.5, 5の6段階であることが多く、2は不合格を意味します。単位認定が期末試験の受験資格になります。

また、日本の大学に比べた総合的な傾向として、先行研究をよく学ぶことが求められ、読まされる本の量も多いです。

試験と単位について

試験は試験期間中に行われます。記述試験の場合もあれば口頭試験の場合もあります。口頭試験の場合の試験官は原則講義の担当者ですが、もっとランクが上の専門家が出てきて試験官を担当することもあるようです。

試験に合格するとその学期のその科目はクリアしたことになります。不合格の場合、次の学期が始まる直前に再試験を受けることになります。再試験に合格した場合もクリアですが、再試験も不合格になった場合その科目は認定されません。

落第した科目がある場合、留年するケースと留年しないケースがあります。落とした科目の数が少なければ、お金を払って次の年にその科目を再履修することができます。これをwarunkiといいます。この場合、留年しないので卒業が遅れることはありません。

しかし、warunkiが使える科目数には上限があります。あまりにも多くの科目を落としてしまった場合は留年となり、翌年に落とした科目のみ再履修することになります。

しかし、特に重要な必修科目を落とした場合、それだけで進級できなかったり、その年に卒業できなくなったり、最悪の場合退学になったりします。ポーランドの大学は厳しいのです。

ポーランドの大学の卒業要件について

各課程の最後の年になるとゼミが始まります。そして、ゼミの担当者の下で卒業論文(praca)を書きます。卒業論文を提出した後、obronaという口頭試験が行われます。これは書いた論文の内容について質問される試験です。これに合格して初めて大学を卒業することができます。

なお、外国語専攻の場合は最終年にその言語の能力試験があり、卒業要件として定められたレベルに達しているかが試されます。これに受からなければ卒業することができません。

例えば、ヴロツワフ大学のフランス語学科では学士課程の修了要件として「フランス語C1レベル以上、第二外国語B2レベル以上」というのが定められており、3年生の前期の終わりにフランス語C1レベルのテストがあります。

しかし、実際のところC1レベルに到達していなくてもこの試験に合格できてしまうので、C1というのは名ばかりのようです。

まとめ

「無料ではあるが、入学したからといって卒業できるとは限らない、学位が欲しければ必死に勉強すべし」というのがポーランドの大学です。日本とは様子が違いますね。

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