ポーランド語学習支援講座: レッスン10(ポーランド語文法の特徴)

次からはいよいよ文法を勉強し始めます。その前に、ポーランド語の文法にはどのような特徴があるかをこのレッスンで説明します。

ポーランド語は屈折語

「屈折語」は専門用語ですが、ここではシンプルに説明します。ポーランド語では、語尾を変化させることで語の文法的役割を示します。

例えば、辞書を開いてryba(魚)という単語を見つけたとしましょう。このrybaというのは、主に文の主語になるときの形です。

「魚の」という所有格ではryby、「魚を(食べる)」と目的語になると(jeść) rybęというように、いつもrybaという見た目をしているのではなく、文中での役割によって形を変えます。これが屈折語の特徴です。

なお、rybaという単語は全部で14通りに変化しますが、その中には形が同じものもあります。そして、”ryb”の部分はいつも同じで、語尾である”a”の部分だけが変化します。

日本語では、「魚」「魚の」「魚を」というように「魚」という単語の形自体は崩れません。その代わり「の」「を」といったものを足すことで文中での役割を指定します。

こういう理由で、ポーランド語が「屈折語」であるのに対して、日本語は「膠着語」(くっつけ系言語と表現するとわかりやすいかもしれません)に分類されます。

ポーランド語の語順は自由

ポーランド語では、単語の順番をある程度自由に決めることができます。日本語もそうですね。英語のように語順が決められているわけではありません。

例文を使って説明しましょう。

Jan ma psa. (ヤンは犬を飼っている。)

語順通りに訳すと「ヤンは/飼っている/犬を」となります。SVO(主語・動詞・目的語)という構成で、これが基本の語順です。

ちなみに英語の語順もSVOで、日本語の語順はSOVです。日本語なら「ヤンは(主語)/犬を(目的語)/飼っている(動詞)」という順番ですからね。

これを英語に訳すとJohn has a dog.で、英語ではこれ以外の語順はあり得ません。

しかし、ポーランド語文のJan ma psa.では、これ以外の語順でも文法的に間違いにはなりません。

Jan psa ma. (SOV)
Ma Jan psa. (VSO)
Ma psa Jan. (VOS)
Psa Jan ma. (OSV)
Psa ma Jan. (OVS)

これらの語順が使われるのは比較的稀ですが、理論的には可能です。なぜなら、ポーランド語は屈折語だからです。

Jan, ma, psaの3単語は、それぞれJan, mieć, piesとして辞書に載っているはずです。Janは主語なのでそのままですが、miećがmaになると動作主がJanで時制が現在であること、piesがpsaになると目的語であることがわかるので、語順を入れ替えても意味が崩れないのです。

日本語で語順を変えても通じるのは、格助詞(「が」「の」「を」など)がつくことでそれぞれの語の役割がわかるからですね。

ポーランド語では、語自体の変化で役割がわかるため語順が自由になっているのです。語順が自由というのは日本語とポーランド語の共通点です。

ここまでのまとめ

ポーランド語では語順が自由な代わりに、どんな文を作るにもそれぞれの語に正しい語尾を使わないと通じません。まるでパズルや数学のようです。

ポーランド語には7つの格がある

ポーランド語では単語の語尾が変化するということはもう書きましたが、その変化は7つある格に従います。それぞれの格は名詞の文中での役割に関わるものです。

日本人に人気の言語の中では、ドイツ語が4つの格を持っています。

先ほどrybaという単語について少し触れましたが、rybaは格によって異なる形をとります。単数形・複数形の区別もあるので、合計で14通りの変化というわけです。

rybaの変化表。

一つの名詞につき14通りの形を覚えなければいけないというのは大変そうに聞こえますが、変化の規則さえ覚えれば暗記量はそこまで多くありません。

ポーランド語の名詞には性がある

ポーランド語の名詞は全て文法性を持っています。男性・女性・中性です。

日本人に人気の言語の中では、フランス語が男性名詞・女性名詞の区別を、ドイツ語が男性名詞・女性名詞・中性名詞の区別を持っています。

人間の場合はほとんどその人の性別と文法性が一致しますが、人間ではないものを表す名詞、生き物ですらない名詞にももれなく性があります。

唯一の救いは、語尾を見れば性がわかる名詞が大部分であることです。

なお、名詞の性によって格変化のパターンや形容詞の形が変わります。

動詞は時制だけでなく体を区別する

時制には過去・現在・未来がありますが、それだけではありません。動詞のほとんどは不完了体・完了体の二つの形を持っていて、その使い分けが難しいです。

例えば、「書く」という動詞はpisać / napisaćで、不完了体・完了体二つの形があります。この二つは全く同じ動作を指すものの、異なる体を表します。

例えば、

Wczoraj pisałem list.
私は昨日手紙を書きました。(書き上げたかどうかは明かされていないが書いていたという事実を伝えている)

Wczoraj napisałem list.
私は昨日手紙を書きました。(書き上げたという事実を伝えている)

pisałem, napisałemはそれぞれpisać, napisaćの過去形です。この二つの文は体が違うので意味も異なります。

体はアスペクト・相とも呼ばれます。英語には進行形や完了形がありますが、これらもその一種です。もちろんポーランド語の体の使い分けの困難は上達した後も付きまといますが、時制と相の組み合わせが12種類ある英語ほど複雑ではないので安心してください。

 

ポーランド語の文法の特徴をいくつか紹介しました。これで大まかなイメージがつかめたと思います。次からは少しずつ文法の勉強を進めていきましょう。

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