Pendragon: “Beautiful Soul” 楽曲レビュー

イギリスのプログレッシブロックバンドPendragonのアルバム”Men Who Climb Mountains”(2014)に収録されている楽曲“Beautiful Soul”のレビューです。

Pendragonについて: ファンタジーという過去

Pendragon(ペンドラゴン)はイギリスのプログレッシヴロックバンドで、ネオプログレ世代を代表するバンドとしてよく名前が挙がります。

多くの場合Marillionと一緒に出てきますが、最も活躍した時期を比べるとMarillionより10年くらい遅いはずです。

Pendragonが当時人気を得た理由はファンタジー趣味のアートワークとこれでもかというくらい泣きを狙った音楽性だと思います。あまりにもベタすぎて、一部の人は冷めてしまったに違いありません。例えるなら完成したケーキの上からさらに砂糖をかけてしまったような音楽です。

最初期の2枚のアルバムは当時の売れ線を意識したもので、私は2ndを持っていないのですが少なくとも1stはその通りでした。プログレファンの間で語られるのは3rdからのことが多いです。

3rd”The World”, 4th”The Window of Life”, 5th”The Masquerade Overture”, 6th”Not of This World”の4枚が先ほど述べたような音楽性のアルバムで最も聴かれたものです。この4枚をファンタジー期としましょう。

私もここからペンドラゴンを聴き始め、本当によく聴き込みました。このファンタジー的な音楽性がツボにはまったのです。

5thアルバムの曲を演奏している映像です。以前はこんな感じでした。

ちなみにこのバンドはポーランドのKatowice(カトヴィツェ)にあるレーベルMetal Mindに所属していて、ポーランドでの活動が盛んです。ライブDVDの直近3作が録られた会場もKatowiceにあります。

ここです。私はKatowiceに留学していたので写真を持っています。

時代は変わって

7th”Believe”, 8th”Pure”, 9th”Passion”, 10th”Men Who Climb Mountains”はダークな要素を取り入れ、アートワークも悪趣味になったので評価が分かれます。こちらをダーク期としましょう。

元々Pendragonにそこまで思い入れがなくファンタジー期の作品が好きだから聴いていたタイプのリスナーは、わざわざこちらの雰囲気に慣れるまで聴かなかったかもしれません。

私は先ほど2ndを持っていないと書きましたが、残りの9枚は全て買って聴きました。
私が思うにこの変化は不要な装飾をそぎ落とした結果であり、そもそもボーカルのNick Barrett(ニック・バレット)の声質がこちら向きでした。

(ちなみにNickはギターボーカルで、ペンドラゴンのギターは彼一人です。ギターが一番目立つバンドなのでかなりの重労働に違いありません)。

しかも、泣きの要素が全くなくなったわけではありません。毎日豪華な食事をするのと週に一回豪華な食事をするのではありがたみが違うのと同じように、ここぞという時に泣きのギターが来るからこそ感動も一入、という考え方もできますよね。

楽曲について

“Beautiful Soul”“Men Who Climb Mountains”からの楽曲です。確かに一回聞いただけではピンと来ない曲が増えました。私はこの”Men Who Climb Mountains”が発売されるのをずっと待っていましたが、先行トラックとして最初に紹介した”Beautiful Soul”の動画が公開されたときはこの曲が私の期待を下回ったようにすら感じました。

新作がダーク路線を続けているのはアートワークからわかっていましたが、今までにも増して激しい音になったからです。

しかしアルバムが発売されて繰り返し聴くうちにこの曲に感動するようになってきて、最初の微妙な印象は完全に払拭されました。サウンドが激しいのに意外と繊細な曲であることがわかってきたからだと思います。

“Beautiful Soul”はアルバムでは2曲目に入っていますが、1曲目が”Belle Âme”という”Beautiful Soul”をフランス語に言い換えただけのタイトルを持つ短い曲で、”Beautiful Soul”への導入の役割を果たしています。2曲合わせると11分を超えますが、体感的にはあっという間です。

最後に

バンドが結成されたのは実は70年代で、もうかなりのベテランですがようやく2017年に来日しました。私としても思い入れの強いバンドで、来日時には日本を離れていて観に行けなかったのが悔やまれます。

ファンタジー期のPendragonしか聴いていない方も今のPendragonを試してみてはいかがでしょうか。それでは。

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