Fish ライブレポート 2018.05.07

今回はMarillionの元ボーカルであるFishのライブのレポートです。

Fish

FishはイギリスのプログレッシブロックバンドMarillion(マリリオン)のボーカリストとしてバンドとともに有名になりました。初期の4枚”Script for a Jester’s Tear”, “Fugazi”, “Misplaced Childhood”, “Clutching at Straws”で歌っており、バンドの全盛期の功労者でした。

1988年にMarillionを脱退してからは、ソロ活動を行っています。すでに10枚のソロアルバムを発売しており、”Weltschmerz”というアルバムを最終作として発売し2020年に引退することを発表しています。

彼はスコットランド人で、語りのような歌と詩的な歌詞、そして線の細いPeter Gabriel(Genesisのボーカリスト)系の声が特徴です。

ライブに行くことになったきっかけ

FishはMarillionとして1980年代に一度来日しています。それ以降は恐らく来日していないと思いますが、自信はありません。

私はポーランドのカトヴィツェという街に留学していました。その時に、隣町のChorzów(ホジュフ)でレコードファンのためのフェスティバルが開催され、オープニングイベントとしてFishがライブをすることを耳にしました。

私はMarillionのファンで、特に”Misplaced Childhood”は私にとって大事なアルバムです。Fishの最近のライブ動画を見て随分衰えたなとは思っていましたが、彼を生で観る機会を逃すわけにはいかないなと思いました。

チケットも2000円くらいで買えたと思います。会場はChorzowskie Centrum Kultury(ホジュフ文化センター)でした。私はカトヴィツェだけでなく周辺都市でも交通費が無料になる定期券を持っていたので、交通費0で行くことができました。

ここが会場です。

開演まで

会場に行くためにカトヴィツェからトラムに乗りましたが、KayakというバンドのTシャツを着ている人がいたので「この人はFishを観に行くんだろうな」と思いました。

他にも最寄りの停留所で降りてChorzowskie Centrum Kulturyに向かう人がいました。ライブに行く時に「この人も行くのかな」と思いながら目的地を目指すのは楽しいです。

中に入ると、レコードフェスティバルというだけあってMarillionのレコードがずらりと展示されていました。

レコードの写真です。シングル盤までありました。

さらに、アナログプレーヤーから”Misplaced Childhood”が流れていました。

客層はやはり年齢の高い人中心でしたが、たまに若い人も見かけました。

インタビュー

開演前に、Fishがプログレ系の雑誌のジャーナリストと一対一でレコードへの思いとFish自身のキャリアについて語るインタビューが行われました。

インタビューはもちろん英語で行われ、最初はそのポーランド人のジャーナリストが毎回自分で通訳していました。しかし話す内容が多くいちいち通訳するのは大変だったので、後に通訳しなくてもわかるという客席の合意のもと英語のみになりました。

本当に観客が理解できていたのかはわかりませんが、やはりポーランド人は基本的に英語が得意だよなーと思いました。日本でこういうライブをするなら、通訳が絶対必要だと思います。

要点をまとめるとこんな感じです。

「レコードの時代は、作品を作る側もA面→盤を裏返す→B面という流れを意識して作っていた。だから、レコード時代に作られた作品はレコードで聴くことで本当の味わいが出る」

「自分は煙草を吸うし、それによる歌への影響を気にしたことはない。ボイストレーニングもしたことがない。なぜなら、自分はボーカリストではなく詩人だからだ」

「自分は歳とともに声が出なくなってきて昔の曲のキーを下げなければいけなくなることに抵抗がない。キーが変わっても同じ曲だからだ。でもMarillionでギターを弾いているSteve Rotheryは曲を作った時のキーにこだわって、それを下げることを許さなかった」

「引退に向けて準備を進めていて、Marillion時代の各アルバムに順番に別れを告げている最中だ。この前は”Misplaced Childhood”に別れを告げたし、今は”Clutching at Straws”に別れを告げようとしている。2020年にはステージから身を引く予定だ」

「最後のアルバムとなる”Weltschmerz”は自分のキャリア史上最高のアルバムになる」

セットリスト

セットリストは覚えていなかったので後から調べました

1. The Voyeur (I Like to Watch)
2. Emperor’s Song
3. Circle Line
4. State of Mind
5. Hotel Hobbies
6. Warm Wet Circles
7. That Time of the Night (The Short Straw)
8. Just for the Record
9. Incommunicado
10. Torch Song
11. Slàinte Mhath
12. Going Under
13. Sugar Mice
14. White Russian
15. The Last Straw
16. Tux On
17. Perfume River

(5-16曲目はMarillionの曲です)

ライブレポート

私は2階席の最後列で観ました。というのも、チケットを予約した時にすでに1階席が埋まっていて、辛うじて2階席が取れたからです。チケットの売れ行きは本当に良かったようですね。

大きな会場ではありませんが、チケットが発売になって2日か3日で全席埋まったのだと思います。早めにチケットを購入したいというメールを送って良かったです。

私はFishのソロでの曲を知らないので、最初の方に演奏された数曲はわかりませんでした。しかし、どれもポップな雰囲気の曲でした。もう高い声が出ないのであまり盛り上がりと迫力が感じられませんでしたが、Fishが目の前で歌っているというだけで嬉しかったです。

Marillionからは、“Clutching at Straws”の全曲再現をやりました。曲順はアルバムと違いましたが、全曲演奏されました。

私はこのライブの3か月前にようやく”Clutching at Straws”を手に入れました。それまで、Fish時代の作品からは”Script for a Jester’s Tear”と”Misplaced Childhood”しか持っていませんでした。

ヴロツワフに行った時にようやく”Fugazi”と”Clutching at Straws”を買ったのです。

このアルバムを聴いてはいましたが、全然聴き込んでいなかったので「あ、この曲は”Clutching at Straws”の曲だ!」というレベルでしかわからなかったのが残念です。もっと聴き込んでいれば感動の大きさが違っただろうなと思いました。

それでも、”Clutching at Straws”の曲は良いものばかりなので、非常に楽しかったです。このライブを観て家に帰った後、このアルバムを聴き込みました。

思い入れの強さは違えど、”Clutching at Straws”は”Misplaced Childhood”と同じくらいクオリティの高い傑作だと思います。

結局”Misplaced Childhood”の収録曲は演奏してくれませんでしたが、Marillionの曲が13曲も演奏されたので私は幸せでした。

また、このライブを機にFishのソロ作品も聴いてみようという気持ちになりました。

実は、ライブ中に脚にアクシデントが起きたらしく、途中何度か座って休まなければいけなくなりました。ライブ後にFacebookで脚の状態はかなり悪いという投稿があったので心配になりましたが、その後良くなったようです。

まとめ

私の音楽人生の転換点となったMarillionのアルバム(“Misplaced Childhood”)の主役であるFishを生で観れたことは、本当に良い思い出です。

MarillionやFishはもうベテランなのでアーティストとしての寿命はもう長くありません。それでも、素晴らしい若手プログレバンドが多数存在するのでジャンルは続いていくと思います。

一応Marillionもプログレの創始者世代ではなくネオプログレ世代なので、今出てきているバンドがまた後継者として将来プログレ界をリードする存在になるのでしょう。

時代は変わっていきますが、若手を追うだけでなく「レジェンドを観る」ことにも大きな意味があるな、と感じたきっかけがこのFishのライブでした。

 

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