ポーランド語にはnieboという単語があります。これは「空」または「天国」を表します。
しかしこの単語は特殊で、宗教的な文脈などでは複数形の活用が異なり、特にw niebiosachと複数形前置格で使われることがよくあります。w niebiosachだけでなく、あまり使われませんがw niebiesiechも可です。
このような形はどこから来ているのかを説明します。
ポーランド語にはnieboという単語があります。これは「空」または「天国」を表します。
しかしこの単語は特殊で、宗教的な文脈などでは複数形の活用が異なり、特にw niebiosachと複数形前置格で使われることがよくあります。w niebiosachだけでなく、あまり使われませんがw niebiesiechも可です。
このような形はどこから来ているのかを説明します。
ポーランド語の動詞のうち、-ećで終わるものは過去形において語幹に2種類のバリアントがあります。
例えばmieć(持つ)という動詞では、
miał (単数男性)
miała (単数女性)
miało (単数中性)
mieli (複数男性人間)
miały (複数非男性人間)
というように複数男性人間以外でa、複数男性人間でeが現れています。
他にもsłyszeć(聞く), krzyczeć(叫ぶ), obejrzeć(見る), myśleć(考える)などの動詞で同じパターンが現れます。
このe : aという母音交替はどこからきているのでしょうか。
ポーランド語ではおよそ9世紀から10世紀の間にprzegłos lechickiという音韻変化が起きました。これはポーランド語が属するレヒト諸語全体で起こった変化で、現在残っている他のスラヴ諸語(カシューブ語を除く)には存在しません。
これは*ěが軟子音の後かつt, d, s, z, n, r, ł の前でaに変化するというものです。
現代ポーランド語におけるe : aの母音交替は全てここから来ていて、wiatr(風)が前置格でwietrzeになるのも、światが前置格でświecieになるのも、miastoが前置格でmieścieになるのもprzegłos lechickiの影響です。
przegłos lechickiの全体像については今後独立した記事を書きますが、ここで大事なのはこのタイプの動詞がほとんどの場合元々*-ětiという終わり方をしていたということ、そして過去形に現れるłの影響でěがaに変化し、lの前で変化せずに残ったěはeと同化したということです。
現在ではaが4つの形で現れる一方eは1つの形(複数男性人間)でしか現れないのでeが例外のようにも見えますが、歴史的にはaの方が後からできたのです。
今回はポーランド語の単語をテーマとして取り上げ、その成り立ちを歴史文法の観点から説明する記事です。今後このタイプの記事を複数書いていくことになると思います。
今回はojciec(父)という単語です。
ロシア語を知っている人ならこれがロシア語でотецなのを知っていると思います。これをポーランド語に規則的に直すとociecとなるはずですが、現代ポーランド語ではojciecです。それがなぜなのかは、この記事を読むとわかります。
ポーランド留学中に大学で受けた授業の紹介です。今回はFonetyka historyczna języka polskiegoという科目です。この回からはいよいよポーランド語学科の授業の紹介に入ります。
このシリーズでは現在ポーランド語に存在する名詞の格変化語尾をそれぞれ歴史的に説明していきます。
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今回もポーランド語の子音交替を一つ取り上げて解説していきます。
この記事を読んで解決する疑問の例はこちらです。
「noga(脚)の単数前置格形はなぜo nogieではなくo nodzeなのか?」
今回もポーランド語の子音交替を一つ取り上げて解説していきます。
この記事を読んで解決する疑問の例はこちらです。
「książka(本)の単数前置格形はなぜo książkieではなくo książceなのか?」
ポーランド語における子音交替・母音交替を一つずつ記事に取り上げて説明していくシリーズです。今回はk : czの子音交替についての記事とほぼ同じ内容になります。
k : czについての記事はこちらです。↓
今回の記事を読んで解決する疑問の例はこちらです。
「重さを表す名詞はwagaなのに重さがあるという動詞がważyćなのはなぜか?」
ポーランド語における子音交替・母音交替を一つずつ記事に取り上げて説明していくという細かいことをするシリーズです。需要が少ないと思いますが、珍しい情報だと思うのでやっていきます。
今回の記事を読むことで解決する疑問の例は以下の通りです。
「płakać(泣く)の1人称単数現在形がpłakęでなくpłaczęなのはなぜか?」