[公認]歌詞和訳 Aistė Smilgevičiūtė ir Skylė “Septynis ilgus metus”

リトアニアのフォークロックバンドAistė Smilgevičiūtė ir Skylėの楽曲”Septynis Ilgus Metus”の歌詞の日本語訳を紹介します。

Septynis ilgus metus

概要

この楽曲はリトアニアのフォークロックバンドAistė Smilgevičiūtė ir Skylė(アイステ・スミルゲヴィチューテ・イル・スキレー)が2000年に発表したアルバム“Babilonas”(バビロナス)に収録されています。

タイトルのSeptynis Ilgus Metusの読みをカタカナで無理やり表すと「セプティーニス・イルグス・マトゥス」となります。

私のお気に入りの曲はたくさんあるのですが、中でもこのSeptynis ilgus metusが大好きです。

思い入れもあるためかなり前からこの曲の歌詞を日本語に翻訳したいと思っていました。

このグループのメンバーとはこのブログを書いている2018年12月までで3度会ったことがあります。2017年の9月に少し時間があったので個人的に翻訳作業をしているということをアーティスト側に伝えたところ、せっかくなのでファンの皆とシェアしませんかという提案をいただきました。

結果として私の翻訳がバンドのFacebookページで発表されました。自分でブログに載せるにあたってはしっかり許可をいただいております。

試聴

なお楽曲はこちらで無料で聴くことができます。このストリーミングサイトではリトアニアの音楽が無料で聴ける上、再生回数に応じてサイトに音楽を投稿しているアーティストに報酬が支払われる仕組みになっています。

Septynis Ilgus Metusを視聴する(リトアニアのアーティスト還元型ストリーミングサイトpakartotへのリンクです)

Aistė Smilgevičiūtė ir Skylėの他の楽曲もアップロードされているのでぜひ聴いてみてください。

翻訳

歌詞

(歌詞原文はリトアニア語です。)

Septynis ilgus metus mes gėrėm žiedlapių midų.
Bridom per kopas baltas ir žiūrėjome viens į kitą.
Septynis ilgus metus mano rūmuose žarstėme auksą.
Ir kieme tarp švelnių augalų aš tau būriau meilę saldžiausią.

Bet tau reikėjo vėjų
Ir sirenų klyksmo ir laivų,
Nes likimas tau skyrė pavojus.
Aš tau siūliau meilę
Ir nemirtingumą ir turtus,
Bet tau per mažai, per skurdu.

Daviau aš tau gerti vandens užmaršties
Ir bandžiau ištrinti kelius tavo praeities.
Atlėgo tau namų ilgesys ir vaizdai sunkios patirties,
Bet vis tiek negalėjau išplėšti širdies praėjusių dienų atminties.

Tau reikėjo vėjų
Ir sirenų klyksmo ir laivų,
Nes likimas tau skytė pavojus.
Aš tau siūliau meilę
Ir nemirtingumą ir turtus,
Bet tau per mažai, per skurdu.

Ir todėl aš nežinau, kokia jėga
Liepė tau palikt mano salą,
Tai nemirtingų dievų valia
Kvietė tave į kelią,
Ir todėl aš stoviu viena tarp smilčių
Ir žiūriu kaip kyla burės.
Neužteko sulaikyt man tavęs jėgų,
Tad išplauk – man tu būsi pražuvęs.

Tau reikėjo vėjų
Ir sirenų klyksmo ir laivų,
Nes likimas tau skyrė pavojus.
Aš tau siūliau meilę
Ir nemirtingumą ir turtus,
Bet tau per mažai, per skurdu.

Tau reikėjo vėjų
Ir sirenų klyksmo ir laivų,
Nes likimas tau skyrė pavojus.
Aš tau siūliau meilę
Ir nemirtingumą ir turtus,
Bet tau per mažai, per skurdu.

※作詞: Aistė Smilgevičiūtė(ボーカル)

和訳

 

7年もの長い間 私達は花びらのミドゥスを飲んだよね
白い砂丘を歩きながら お互いに見つめ合ったよね
7年もの長い間 私の宮殿でありあまる黄金と戯れたよね
中庭の優しい草木に囲まれて この上なく甘い愛の魔法をかけてあげた

でもあなたには風と セイレーンの叫びと船が必要になった
だって運命があなたに危険を与えたから
私は愛と永遠の命と富をあげた
なのにあなたにとっては全然、全然足りないんだね

あなたに忘却の水を飲ませた 過去を消し去ってあげようと
あなたは故郷への憧れと辛い記憶から解放された
でもやっぱり 私は過ぎた日々の思い出を心から拭い去れなかった

あなたには風と セイレーンの叫びと船が必要になった
だって運命があなたに危険を与えたから
私は愛と永遠の命と富をあげた
なのにあなたにとっては全然、全然足りないんだね

そんなわけで私は あなたが私の島を去らなきゃいけなかった訳を知らない
あなたを旅へと誘ったのは 不死身の神々の意志だった
そんなわけで私は 独り砂の中に佇んで帆が上がるのを見ている
私にあなたを引き留められるだけの力はなかった
さあ船を出しなさい – 私の世界からは消えてしまうのね

あなたには風と セイレーンの叫びと船が必要になった
だって運命があなたに危険を与えたから
私は愛と永遠の命と富をあげた
なのにあなたにとっては全然、全然足りないんだね

あなたには風と セイレーンの叫びと船が必要になった
だって運命があなたに危険を与えたから
私は愛と永遠の命と富をあげた

なのにあなたにとっては全然、全然足りないんだね

翻訳メモ

1段落1行目: septynis ilgus metus < septyni ilgi metai
septyniは「7」。楽曲のタイトルですが、厳密に言えば文法的に間違っています。
本来はseptynerius ilgus metusとなるべきで、この曲が発表された後にリトアニア語協会から声がかかり、後に発表されたライブDVDやベストアルバムなどではタイトルが修正されています。
しかし現実的に言えばリトアニア語のネイティブスピーカーの感覚ではseptynisでもseptyneriusでも違いが感じられないそうです。

1段落1行目: midų < midus(テキストで使われている形 < 辞書形)
ミドゥスとはリトアニアの伝統的な蜂蜜酒の名前です。

1段落3行目: žarstėme auksą
訳文では「ありあまる黄金と戯れたよね」がこれに対応しています。auksą < auksasは黄金ですが、žarstėme < žarstytiという動詞については少し説明を加えなければいけません。
砂浜に座り込み、砂がたくさんあるので意味もなく手で砂をすくい上げて左手から右手へ、そして右手から左手へザーッと流して遊ぶ、これがžarstytiだそうです。
この動作を砂ではなく黄金で行っている光景が原文のイメージで、žarstėmeという形は一人称複数過去形なのでこの歌詞の主人公とパートナーが宮殿でこうやって遊んでいたということです。

3段落3行目: atlėgo < atlėgti
atlėgo tauを「あなたは~から解放された」と訳していますが、「(ある気持ちが)和らいだ、落ち着いた」とした方が直訳に近いです。

5段落3行目: tai
歌詞カードには書かれていませんが実際には歌われています。文頭にこれを置くことで次に来る語にフォーカスが置かれるという強調構文。
この文では主語のnemirtungų dievų valia – 「不死身の神々の意志」が強調されているのでそれを翻訳にも反映しました。

5段落6行目: žiūriu < žiūrėti
「見る(一人称単数現在)」です。歌詞カードにはstebiuと記されていますが実際にはžiūriuと歌われています。どちらの動詞も「見る」と訳すことができます。

翻訳にあたって

正直なところ私はリトアニア語が話せないので、翻訳をする資格があったのかどうかはわかりません。

しかし実用は考えたことがないもののリトアニア語のシステムは理解しており、テキストを見て文法的な分析をするための知識はあるので時間をかけて辞書とにらめっこしながら地道に作業を進めていきました。

(リトアニア語は屈折語、つまりロシア語に代表されるスラヴ諸語の大部分と同じ分類であり、語の変化によってほとんどの情報が示されるので、それぞれの語がどんな品詞でどんな変化をしているのかがわかれば理解することができます。)

日本語訳の作成にあたっては、訳文が日本語テキストとして自然なものになるように細心の注意を払いました。その理由として、リトアニア語と日本語の両方がわかる人が非常に少ないということが第一にあります。
つまり最もポピュラーな英語歌詞の和訳においては読者の大半が自らの英語に関する知識を駆使して原文と訳文を比較しながら読むのに対し、リトアニア語歌詞の和訳においてはそういった状況が考えにくいからです。

まとめ

これまで自分の翻訳を広く発表したことがなかったため初めての作品が専門外ともいえるリトアニア語日本語翻訳となってしまいましたが、日本にとっては遥か彼方のように思えるリトアニアという国のアーティストに偶然出会いファン作品という形で直接貢献できたことが今でも奇跡のように感じられます。2017年の一番の思い出の一つです。私の翻訳が許容できるレベルに達していることを祈るばかりです。

 

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